研究課題/領域番号 |
15KK0067
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
野網 摩利子 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (60586668)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 夏目漱石 / 文学理論 / 西洋思想 / 受容 |
研究実績の概要 |
夏目漱石を中心に、日本近代文学を考察することで、文学理論の世界的な刷新を目指す試みを進行している。2016年12月にオックスフォード大学で開いたシンポジウムの第2回として、2017年6月に国文学研究資料館にて「文学の‘DNA'―世界文学と日本近代文学」を主催した。マイケル・ボーダッシュ シカゴ大学教授、スティーブン・ドッド ロンドン大学SOAS教授、小森陽一東京大学教授、谷川惠一国文学研究資料館教授、野網が発表を行った。この2回にわたるシンポジウムにより、本研究が作成を目指す文学理論の意義と、その応用可能性について、国内外に提示したことになる。 同時に、共著作りに取り組んでいる。国際共同研究の精度を高めるために、また、共著の内容について相互の認識を高めるために、上記渡航期間に、論文を交換しあい、議論を詰め、日本語学術書のための添削を行ってきた。 他に野網が本研究の実績を築いている論文に、つぎのものがある。「思想との交信―漱石文学のありか」【上】【下】では、漱石自身による『文学論』が西洋思想に匹敵する内容を持ちあわせており、その理論的観点が保持されたまま小説創作がなされていることを証明した。「漱石文学の生成―『木屑録』から『行人』へ」では、本研究の方法として重視する漱石自身が読み込んだ書物、ならびに、国内外の同時代知識人の言辞を刺激にして小説が創られた経緯を明らかにできた。さらに、「古譚と『草枕』」は、漱石が西洋思想・文化を摂取することで、日本古典にどう向き直ったのかという、本研究のテーマの一つを突き詰めた。 このように、本研究の両輪である、漱石自身の文学理論も含めた文学理論の再構築、それを基軸とした小説考察について、海外研究機関をも活用しながら、着々と進め、迅速に成果発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、共著による半永久的な文学理論の提示を見込んだうえでの、二年連続の国際シンポジウム開催、ならびに、国際共同研究の発表が実施できた点が大きい。シンポジウム開催によって、作成中の文学理論の有効性を広く世に問い、また、多様な文学への応用可能性を確認し、フィードバックを得たうえで、共著論文作りに取り組めているからである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度中には、日本語共著出版を果たすため、現在、編集作業に注力している。目指しているのは、単に、文学研究分野で認知される文学理論ではなく、医学などの分野からも注目される、最新の遺伝子学を活用した文学理論であるため、理論整備をより急いで行う必要がある。
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