研究課題/領域番号 |
15KK0068
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
坊農 真弓 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 准教授 (50418521)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 日本手話 / 手話言語 / アノテーション / 修復連鎖 / マウジング / 中国手話 / コーパス / 手話会話 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,日本手話研究を従来の用例・母語話者の直感ベースの研究ではなく,自然な対話データを収録したコーパスを用いるなど,データ中心科学の手法で手話言語研究をパラダイムシフトさせることを目的としていた.そのために,(1) 基課題のSMUアノテーションの手法を海外の関連研究者と議論・共有,(2) SMUアノテーションを付与した対話データを用いた修復連鎖とマウジングの研究,(3) 海外の手話言語コーパスに対し,本手法を適用し,比較言語学の枠組みを構築,(4) 論文共同執筆を予定していた.平成28年度は,オランダへの11ヵ月に及ぶ滞在を通し,上記の(1)(2)(3)を実施した.(1)については,マックスプランク心理言語学研究所とラドバウド大学の関連研究者を集め,2ヵ月に一回程度データセッションを実施した.本データセッションは,Dr. Connie de Vos が主として企画し,私かDr.de Vosがデータを用意し,議論を進めた.オランダ手話母語話者やラドバウド大学で手話研究チームを率いるProf. Onno Crasbornが出席し,有意義な知見交換が実施できた.(2)については,自身が日本から持参した日本手話のデータの一部に詳細にアノテーションを付与し,論文投稿,雑誌投稿,書籍原稿執筆を達成した.(3)については,マックスプランク心理言語学研究所でリサーチアシスタントをしてもらった中国手話母語話者に中国手話会話データを収録してもらい,基課題で提案する手話言語記述手法によるアノテーションが実現可能であることを確認した.(4)については,滞在後半にDr. Connie de Vosが出産・育児によるライフイベント休暇を取得したため,実現には至らなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は,Dr. Connie de Vosとの共同研究のみを想定していたが.近隣のラドバウド大学の手話チームとの連携や,滞在していた中国手話母語話者にリサーチアシスタントとしてのアノテーション作業を依頼するなど,計画以上の進展が見られた.論文執筆は現在進行中であるが,滞在中にマックスプランク心理言語学研究所所長のProf. Stephen C. Levinson (語用論) やシニア研究者のProf. Gunter Senft (一般言語学) から有益な助言いただくなど,研究の報告性やオリジナリティが明確になった.また,Prof. Asli Ozyurek (心理言語学) のラボミーティングにも定期的に参加し,情報交換をするなど,手話だけではなく,ジェスチャーや心理言語学のアプローチについて,見識を深めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度内に当初予定していた1年程度の滞在を終えたため,今後は滞在中に得た分析結果や知見を国際ジャーナルに投稿する準備を進める.
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