研究課題/領域番号 |
15KK0069
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
伊藤 敦規 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (50610317)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 博物館人類学 / ソースコミュニティ / カルチャル・センシティビティへの配慮 / 協働 / 民族誌資料 / 米国先住民 / ドキュメンテーション / 文化人類学 |
研究実績の概要 |
4月に米国ワシントンDCのスミソニアン協会国立アメリカンインディアン博物館(NMAI)と付属施設の文化資源センター(メリーランド州)を訪問し、収蔵資料150点の写真撮影と採寸を行った。この調査はシアトルのバーク博物館のコレクションマネージャーであるキャシー・ドーハティー氏(2015年末まで北アリゾナ博物館(MNA))と共に実施した。また、海外共同研究者であるゲヨ・ジョイス(NMAI、コレクションマネージャー監督)やシンシア・チャベス=ラマー(NMAI、資料管理部長)にプロジェクトの進捗報告と方法論の確認を行った。 5月に、4月の調査で得たデータをソースコミュニティであるホピ(保留地)に持参し、ホピの銀細工師と若手作家と共に、TVモニターに資料画像を映し出しながら熟覧調査を行った(間接熟覧・デジタル熟覧)。熟覧中に発せられた資料一点一点の解説は、ビデオカメラ、スチールカメラ、ICレコーダーで記録した。また、ソースコミュニティの熟覧者は配布した資料情報を記した紙に感想やデザイン画を書き・描き込んでいたので、それもスキャナーでデジタル化した。 6月以降、北アリゾナ博物館(MNA)の施設などに熟覧参加者をもう一度招聘し、協働編集作業を行った。この作業は、先の間接熟覧調査時に撮影した動画を再生しながら彼らの解説を文字起こししたテキストデータの内容と照合する作業のことであり、カルチャル・センシティビティへの配慮が必要な箇所の洗い出しも行った。 2017年8月から9月の6日間には、国際ワークショップ「博物館とディセンダントコミュニティおよびソースコミュニティとの協働」を開催した。2017年10月にも国際ワークショップ「博物館資料とソースコミュニティとの『再会』の地元教育現場への展開」をMNAで開催した。 12月、NMAIを再訪し、熟覧調査に参加したホピの銀細工師と共に進捗の報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進んでおり、連携機関が拡大しつつある。 2015年12月末まで北アリゾナ博物館のコレクションマネージャーだったキャシー・ドーハティー氏は、2016年1月に異動し、米国ワシントン州シアトルのワシントン大学附属バーク博物館の資料管理マネージャーとなった。昨年度はバーク博物館を訪問し、本プロジェクトで展開している資料熟覧の方法論を大学院修士課程の学生に教授した。ドーハティー氏は国立アメリカンインディアン博物館での就労経験もあるので、4月の資料調査の際にシアトルから招聘し、一緒に作業を行うとともに、スタッフに対して進捗報告などを行った。 北アリゾナ博物館では新たな熟覧対象として約1,000年前に制作されたメンブリス土器資料の写真撮影と採寸を行い、ソースコミュニティの若手作家の教育機会として国際ワークショップを開催した。 新たな連携機関として、ニューメキシコ州立大学附属博物館(ニューメキシコ州ラスクルーセス市)、ジェロニモ・スプリングス博物館(ニューメキシコ州トゥルースオアコンシクエンシーズ市)、ワシントンDCの国立自然史博物館の三館が加わった。特にニューメキシコ州立大学附属博物館との協力関係を大幅に展開することができた。館長のフミヤス・アラカワ氏と共にメンブリス土器資料を対象とした二度の国際ワークショップを開催した。アラカワ氏は2017年11月から8ヶ月間、私が所属する国立民族学博物館の外国人研究員として採択されたため、実施した二つの国際ワークショップの成果出版に向けたデータ整理や分析を現在一緒に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた北アリゾナ博物館、デンバー自然科学博物館、国立アメリカンインディアン博物館に加え、2016年度はデンバー美術館とコロラド州歴史協会、2017年度は国立自然史博物館、ジェロニモ・スプリングス博物館、ニューメキシコ州立大学附属博物館が加わり、合計8機関が収蔵する資料のソースコミュニティの人々との熟覧調査(直接熟覧・間接熟覧)を行うことができた。それらの文字起こしと協働編集作業も順調に進んでいる。 当初目標に以下の項目も掲げた。①資料熟覧で得られたデータとアーカイブ資料との関連付け、②資料熟覧データのデータベースへの格納、③成果公開。①は対象としている北アリゾナ博物館の展示替え作業が大幅に遅れていたため、未実施である。2018年3月現在、本プロジェクトのためのアーカイブ資料調査への人的配置が不可能となっているためである。熟覧調査の協働編集作業を完遂するために2018(平成30)年度にも訪問予定なので、その時にアーカイブ資料調査の実施のための準備を進める。②は別予算で進めていたデータベース構築の基本構成とデザインが概ね完成したので、本プロジェクトで実施した熟覧調査で得られた発話のテキストデータ化と動画編集(日本語字幕挿入)が整い次第、データの格納を行う。③は天理大学附属天理参考館や国立民族学博物館での展示会の一部として成果公開することがかなった。現在は、その経験を活かしながら米国での展示会の企画を進めている(ニューメキシコ州立大学附属博物館)。また、資料熟覧で得られた膨大なテキストデータを、実施機関ごとにまとめて出版する準備を進めている。
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