研究課題/領域番号 |
15KK0070
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研究機関 | 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館 |
研究代表者 |
向井 朋生 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, リサーチフェロー (30620463)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 美術史 / 工芸史 / 考古学 / ローマ土器 / 古代ローマ |
研究実績の概要 |
本研究は前年度まで採択されていた申請者が研究代表者を務める科学研究費助成事業(基盤研究(C))「古代ローマ工芸美術の基礎的研究 ~テッラ・シギラタについて~」の成果をわが国の研究者が研究ツールとして利用できるように画像データを補い「実体化」させることを主眼にする。交付決定の通知(本年5月12日付)を受け、本研究は平成29年度より開始される。 前研究は古代ローマ工芸美術において重要な位置を占めるローマ土器であるテッラ・シギラタ(Terra Sigillata)の現在までの諸外国の研究を精査し体系付け、わが国の関連諸学の研究者(西洋美術史、西洋古代史、古典考古学)が参考としうる手引を作成することにより、古代ローマ工芸史、ひいては古代ローマ文明研究全体に関わるわが国の研究に貢献することを目的とするものであった。テッラ・シギラタはその流通量と広範な分布範囲は当時の交易の状況を示し、その土器編年の詳細さは貨幣などと比肩する有効な年代決定資料として遺跡・遺構の年代比定に貢献する、考古学・歴史学的に重要な資料でもあることから、古代ローマ世界で最も重要な土器の一つである。 本国際共同研究では紀元前2 世紀から紀元後7 世紀に渡り地中海各地で生産・流通したテッラ・シギラタから、産地と時代が判明しているものから抽出されたサンプルを元に、土器の写真やその地質学的胎土分析を織り込んでデータベース化を行い、インターネット上における公開を最終的な目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述したように本研究は交付決定通知(本年5月12日付)を受け、平成29年度から開始される。これは前研究の科学研究費助成事業(基盤研究(C))「古代ローマ工芸美術の基礎的研究 ~テッラ・シギラタについて~」を一年延長したことに因る。 国際共同研究者であるカミーユ・ジュリアン・センター研究ディレクターのミッシェル・ボニフェ博士、およびテッラ・シギラタの地質学分析において助力をいただくジェノヴァ大学の地質学者クラウディオ・カペリ博士とはすでに本研究のプログラムについて意見交換を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度から開始される本国際共同研究において、研究代表者は2017 年6 月から一年間の渡航を予定する。 渡仏後は国際共同研究者ミッシェル・ボニフェ博士と協議の上、データベース化するテッラ・シギラタの選定を行う。カミーユ・ジュリアン・センターや前文化庁長官・前西洋美術館館長青柳正規が指揮する東京大学によるイタリア共和国ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡における発掘出土遺物以外のテッラ・シギラタからサンプルを必要とする場合には必要に応じて各方面に許可を申請する。テッラ・シギラタの各カテゴリーから広く収集されるサンプルは、写真撮影後、随時プレパラート標本にされ地質学分析の対象となる。 また、カミーユ・ジュリアン・センターのデータベース担当者の意見を仰ぎつつ、ミッシェル・ボニフェ博士と共に公開されるテッラ・シギラタデータベースの様式を検討する。
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