York大学考古学部およびArchaeological Data Service(ADS)において、主に遺跡探査情報の取得と活用に関する研究をおこなった。取得については、地中レーダー、磁気探査、電磁探査など移動しながらデータを取得する機器の位置精度向上に関連する研究をおこない、GPS、LiDAR(レーザー)やStructure from Motion技術の利用によって低コストで地表の地形情報と地中の探査情報の連携を同時に取得する方法の確立に目途をつけた。活用については、中心的な課題としていた考古学情報の集積と標準化の実態について、探査情報の利用が進んでいる英国の実態を検討することができた。特に、官学民での役割の分担や、負担の在り方などの知見を得ることができた。これらを基に、日本の実態や考古学情報の利用についての議論をおこなった。欧州内の実態についても、フランス、スウェーデン、ドイツ、オーストリア、スペインで研究会や機材の試験をおこない、研究者との交流や研究機関の見学、情報流通の手法についての議論をおこない、フランスCNRSでは研究者向けの講演をおこなった。これらの成果を、今後日本での遺跡探査の活用の推進に結び付けたい。 研究期間の最後には考古学情報の流通と活用についてのセミナーを英国2カ所(Norwich・York)で奈良文化財研究所およびセインズベリー財団、ヨーク大学の参加者とおこない、両国の実態を議論するとともに、奈良文化財研究所が推進している遺跡報告総覧と欧州のプロジェクトとの連携など、今後共同研究を進展させていくきっかけとすることが出来た。
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