今年度は、次年度以降の渡航にむけての準備作業を実施した。具体的には、第一に、基課題で収集してきた途上国都市の都市底辺層の生活史/生活誌のデータを整理しなおし、リスク社会論の観点から再考察するための分析作業をおこなった。第二に、リスク社会論の国際的な研究動向を把握し、とりわけ途上国都市研究に転用したそれを読解する作業をおこなった。第三に、次年度以降の渡航先との打ち合わせをおこない、渡航後のスムーズな研究体制の構築について議論をおこなった。 第一の点については、申請書にも記した通り、申請者が基課題で得たデータをもとに、さらにそれらを申請者が過去10数年にわたり蓄積したデータとも付き合わせながら、リスク社会論の分析観点から整理し直す膨大な作業を実施した。そこからわかったことは、途上国都市研究では「スラム研究」と一括認識されてきた研究対象が、じつはその内部において重要な差異を含んでいることであった。 第二の点については、第一の点とも関連するが、とりわけラテンアメリカの事例研究を広く読解した。ラテンアメリカの研究では、スラム研究が、広義の知識社会学へと接続される潮流が見られ、そうした最新の研究動向を学ぶことで、本研究課題をより深めることができると同時に、次年度以降の渡航後のデータセッションがより有用なものになることが確認できた。 第三の点については、渡航先との細かい打ち合わせを実施した。その結果、個人研究室、連携する研究スタッフ、図書館などの自由なサービス利用、データセッションの日程といった事柄を具体化することができた。
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