研究課題/領域番号 |
15KK0073
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
古谷 豊 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (00374885)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | ステュアート / 貨幣的経済理論 / 重商主義 / スコットランド啓蒙 |
研究実績の概要 |
平成29年度はデューク大学(米国)に客員フェローとして滞在して、Paul Dudenheferをはじめとする多くの海外研究者達と交流する中で、本研究課題に取り組んだ。海外で様々な研究者と日常的に交流し、議論を深めていくと、思いもかけない提案やつながりがもたらされ、結果としてこの共同研究は当初の私の予想をはるかに超えて、広がりを見せていった。国際共同研究の醍醐味であろう。 まずステュアートの貨幣的経済理論についての国際学会を、スペインにて、共同でオーガナイズすることになった。その過程で、世界中の研究者と議論を深めることができ、これはステュアートの経済理論の英文研究書を、共同で刊行するべきだという議論になり、私は共同編著者の一人に選ばれて海外出版社と交渉していくこととなった。さらに、フランスのリヨン第2大学のベタンコート教授が本研究課題に強く関心を示し、何日も話し合った末、二人でステュアートの貨幣的経済理論に焦点をあてたシンポジウム(ジャーナルの小特集)を組む計画を立てていった。 これらは当初は予想できなかった展開だが、本研究課題とその趣旨に照らして極めて望ましい、またとないチャンスであると判断し、それぞれのチャンスをできる限り実現できるよう、研究の舵を切って進めていった。ベタンコート教授とは平成29年の6月と10月に会って議論し、幸いにも平成30年の1月から2月にかけてベタンコート教授がデューク大学に滞在して、ともに客員フェローとして机を並べて密に共同研究を進めることができた。 これらのおかげで、出版社のRoutlegeからは、出版プロポーザルの採択の通知を受け取ることができ、また、ジャーナルRHETMからも、シンポジウム(小特集)のプロポーザルについて採択するとの連絡をいただけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の全体的な展開という観点からは、当初の計画以上の目覚ましい進展である一方、最初に設定した研究計画の個々の項目で、こなせていないものがあるという点に注目するならば、進捗は遅れているという評価の仕方もある。本研究課題の主旨からすれば、前者の評価が適切であるが、ここは控えめに、あいだをとって「(2)おおむね順調に進展している」とした。 共同研究の射程と、その発表の機会、そのいずれもが当初の予想をはるかに超えて大規模なものへと展開していった。当初は予想もしなかった研究者のネットワークが広がり、それにともない共同研究の軸足の置き方も調整していった。その意味では当初の研究計画を機械的に当てはめた一年間ではなかったが、共同研究は人との共同作業であることを考えればこれは当たり前のことであり、大局的にみれば研究課題に照らして極めて順調に進展していると言えるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
なによりも優先しなければならないのは、昨年度大きく開けたチャンスを最大限に生かすことである。つまり当面は、現在進めている英文研究書の編著作業と、ベタンコート教授と共同でのジャーナルの小特集をまとめる作業をきちんと成功させることに注力することが肝心である。おそらくジャーナルの作業は今年度中で目途がつき、英文研究書はそれより少しかかると思われる。これらの作業に注力する一方で、当初の研究計画のなかで掬いきれていない点があるかどうかについて検討して、研究事業全体のバランスを見ながらフォローアップしていく。
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