本研究の主目的は、多角的な観点から医療イノベーションの価値を整合的に測定するという課題をより発展させるというものである。主に企業側(主にバイオ医薬)に焦点を当て,科学的知識の吸収(主に論文の共著者情報より)とそれを背景としたイノベーション(特許出願や企業業績)との関係をデータから明らかにしようとした。計画としては、科学的知的の吸収を示すデータについては在外先で、イノベーション指標に関するデータは在外中および帰国後に継続して収集し、企業単位のデータセットを作り、分析するというものであった。当初計画していたデータセットは一通り完成し、分析に着手したが、分析の過程で複数の修正点がでており、思ったような結果が出ていない。一方で、在外中に本課題を発展させる形で始めた研究は、一定の成果を見せている。これは科学的知識の源泉である研究者に着目した分析であり、研究者の知識生産はもちろん、特許などのイノベーションにつながる活動をどれだけしているかを明らかにした。このテーマは、元々在外先の受け入れ研究者が米国をケースに行ってきたことであり、今回日本をケースとした研究を加えることで、知識生産とイノベーションの関係について普遍化することにつなげた。研究成果の一部は、国内外の学会や国内の学会誌に投稿して発表した。また本件を巡り、引き続き在外先との良好な協力関係が築けた。このほかに、大学の知を産業に移転し、サイエンスと商業の好循環のケースとして、イギリスの研究者兼起業家らとディスカッションする機会も得て、これまでの研究を総括する上での検討材料を得た。
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