資産バブルに対してどのような政策が望ましいのかに関しては二つの見方がある。一つの見方は、バブルに対して何らかの金融規制を採るよりも、バブル期にはバブルを静観し、いざバブルが崩壊した後に目一杯救済政策を採れば良いという見方である。他方で、別の見方もある。それは、資産バブルの発生を防いだり、資産バブルが実体経済に与える影響や資産バブル崩壊の悪影響を緩和するためには、政府は資産バブルに対して何らかの事前規制を採るのが望ましいという見方である。これは事前規制戦略と呼ばれている。私の研究の目的は、資産バブルの発生と崩壊を前面に出した景気循環理論を構築した上で、バブル崩壊後の事後救済とバブル崩壊前の事前規制のどちらが経済厚生の観点から見て望ましいのかを、合理的バブル理論の観点から明らかにすることである。
上記のテーマに関して、コロンビア大学での滞在中に集中的に分析を進め、多くの新しい知見を得ることができた。分析を進める過程で、米国の大学で研究発表の機会を幾つか得て、研究発表と個人面談を通じて多くの意見交換をすることができた。現在、論文をまとめており、夏までにWorking Paperとして公表できる予定である。分析する過程で、当初は予想もしなかった点との繋がりが分かり、重厚な内容を持つ論文になると自負している。また、受け入れ教員のJose A. Scheinkman教授と毎週のようにmeetingを重ね、この論文を起点に、新しい資産バブルモデルの構築に向けた新しい分析にも着手することができた。
さらに、ノーベル賞学者であるJoseph E. Stigliz教授とも頻繁に議論し、マクロ経済の不安定性と経済政策の役割に関するテーマで共同研究を始めている。最初の論文を2018年の夏までにWorking Paperとして公表予定である。Stiglitz教授と新しいマクロ経済理論の構築を進めている。
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