本研究の目的は、企業の製品選択のデータ分析を通じて、企業の競争力と産業発展の源泉を明らかにすることである。国際共同研究加速の目的を達成するために、メリーランド大学に研究拠点を移し、共同研究の進捗を図った。製品選択に関するデータ分析と並行して、詳細なデータ分析に必要な取締役会の役員、販売ネットワーク、使用されている機械に関するデータベースの作成を行った。データベースの構築自体に学術的価値があり、本研究だけでなく、他の研究にも利用が可能である。データ分析の主な結果は、製品の質の向上を伴う垂直的なプロダクトイノベーションと製品の質の向上を伴わない水平的なプロダクトイノベーションでは、製品化し、生産規模を拡大するには乗り越えなければならない制約に違いがあることをデータで裏付けた。前者の場合は技術的制約が重要となり、後者の場合は需要の制約が重要となる。既存の研究では、供給要因と需要要因が区別されておらず、企業の製品創出の源泉を明らかにしたのが本研究の学術的貢献となる。 新たな研究シードを見つけ、発展させることも国際共同研究加速の目的の一つであった。メリーランド大学の研究者とチームを組んで、新たな国際共同研究を行った。具体的には、国際共同研究加速の研究課題を通じて構築した綿糸紡績産業のデータベースを利用して、取締役会の構成の変化が企業成長にどのような影響を与えるかについて分析を行った。分析の主な結果は、トップマネジメントチームが安定的で目標を共有していると、企業の生産成長率と労働や資本などの企業資源の成長率が高いことがデータで裏付けられた。この研究成果は研究会を通じて報告し、論文としてまとめ、学術誌に投稿した。また、マネジメントと組織に関する研究について、アメリカのセンサス局や各国の統計当局が集まる会議に参加し、共同研究などを国際的な枠組みで行うことを検討し、研究を進めることになった。
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