研究課題/領域番号 |
15KK0079
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
道上 真有 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30527693)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 移民 / 住宅 / ロシア / 市場の多層性 / 登記 / リノベーション |
研究実績の概要 |
本研究の細目課題1)ロシアの土地,登記制度の問題については,サンクトペテルブルグ市とモスクワ市の具体的な都市再開発の事例を対象に研究を進めた。ロシアでは,住宅登記と居住権の関係が法制度の変化を伴い必ずしも統一的な理解が進んでいないこと,民間資本の再開発投資が難しいことなどから,住民合意形成や投資資金確保が遅れ,必要性にも関わらず再開発が遅れていることを明らかにし,同市の共同研究者らと国際共著論文を脱稿し,雑誌に投稿中である。さらに2017年8月から開始されたモスクワ市の5階建住宅の再開発について,資料・データ収集及び研究を進め,日本の協力可能性を明らかにしその成果の一部は日本語論文として発表した。また他方で,ロシアの土地登記制度の歴史と現在の問題について,日本住宅企業のロシア進出課題(開発許可地と住宅需要地が必ずしも合致していないことなど)と合わせて研究を発展させ,現地調査(ウラジオストク,カザン等)を実施した。その成果の一部を中間発表として国際学会等で発表し,ロシアの学術誌への投稿論文も執筆中である。 本研究の細目課題2)ロシアの移民労働者に対する住宅環境については,共同研究者や協力者らとロシア全土25都市における移民労働者の生活環境を問う大規模アンケート調査を2017年6月から2018年3月にかけて実施した。その結果,世界でも例を見ない大規模な回答数1003件を得ることができた。集計結果から,移民労働者の賃貸住宅流通が,ロシアの賃貸住宅市場の一定割合を動かしており,その流通形態は個人間の賃貸契約が中心であること,住宅需要者のセグメント間で相場の開きがあること,そのことがロシアの住宅市場全体の多層性と非公式性をもたらすことを明らかにした。その成果の一部を中間発表として,国際学会等で発表し,学術誌への論文発表も行った。引き続き成果発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロシアへの移民労働者に対する住宅環境を問う大規模アンケート調査を2017年6月から2018年3月にかけて実施した。その結果,ロシア全土25都市,総計1003件の回答を得ることができた。世界的にみてもロシアでこれだけの大規模調査を行ったのは珍しく,ロシアの移民労働者の住宅のみならず,生活,労働環境についても成果が期待できる結果が得られた。ロシアの土地,登記制度の問題についても研究を進展させ,2017年8月から開始されたモスクワ市の5階建住宅の再開発の分析,日本住宅企業のロシア進出という具体的な問題へと研究を発展させながら研究を継続している。これらのテーマについても国際学会等で中間報告発表を行った。ロシアでの長期滞在ビザの延長が当初予定より延長されたことで,渡航期間を延長する計画に変更し,研究をより一層進展できることになった。以上の理由から,研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ロシアでの研究滞在期間を当初の平成30年5月末までから10月末までに延長することになった。その理由は,1)長期滞在ビザ有効期間が当初予定の5月末を上回って11月半ばまで発給されたこと,2)移民労働者の住宅環境についての大規模アンケート調査の完了が平成30年3月末までかかり,その最終集計と分析が平成30年度になったこと,3)共同研究者との国際共著論文および図書の執筆と発表ならびに,アンケート調査を補足するインタビュー調査がH30年度を中心に予定されていること,4)重要な国際学会での発表が既に2つアクセプトされ,その開催が平成30年6月以降に予定されていること,などである。これらの理由から国際共同研究成果の編纂と発表を促進する観点で総合的に判断し,ロシアでの在外研究期間を平成30年10月末まで延長する計画に変更して研究を進める。渡航期間の延長については,本務校,受入研究機関ともすでに了承を得ている。アンケート調査の最終分析結果を,共同研究者と国際共著論文,国際共著図書として発表することに合意し,平成30年度に脱稿,投稿,平成30年度から31年度に図書刊行を目指し,現在その執筆を進めている。帰国後の国内においても計画通り研究成果の日本での発表や研究集会の開催なども視野に平成31年3月末まで実施する。
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