研究課題/領域番号 |
15KK0081
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
木村 優 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成・院), 准教授 (40589313)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 専門職の学び合うコミュニティ / 教師の情動 / 情動的実践 / 授業研究 / 専門性開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)教師の不安受容と挑戦意欲を高める「専門職の学び合うコミュニティ(Professional Learning Communities、以下PLCと表記)」として運営されている学校の組織的実践の卓越性と持続可能性、(2)PLC学校における教師間の情動的実践の共有が教師個人及び学校組織の開発・発展に及ぼす影響、の2点を明らかにすることであった。これらの課題を検討するために、申請者は、学校の組織研究と教師の情動研究の第一人者であるボストン・カレッジのアンディ・ハーグリーブス教授と共同で基課題事例校と米国マサチューセッツ州のPLC学校との比較研究を実施している。 上記の課題(1)に関して、申請者は共同研究者アンディ・ハーグリーブス教授とともに、基課題事例校である高等学校の学校改革プロセスにおける組織的営為を検証し、さらにPLCに関する理論的整理を行った。アンディ・ハーグリーブス教授はすでにPLCに関する理論的整理を前もって進めていたことから、申請者は同教授の理論的整理に基づいてPLCの理論前進の過程を踏まえながら、学校としてのPLCの成熟過程をモデル化することに成功した。基課題事例校である高等学校では、日本独自の学校文化・教師文化である授業研究が教師たちの情動的実践の共有を伴ってPLCの構築と成熟に作用しており、これは授業研究をはじめとした学校内における教師の協働的な専門性開発の組織化とPLCの成熟化との相乗作用や連動性を示唆する結果である。 上記の成果はすでに日本での出版本の中で示し、広く日本の学校教師や教育研究者に読まれることになった。また、この成果を踏まえて、授業研究とPLCの関係に関する新たなパースペクティブを拓いたことで、学校一事例に限らず日本国内および世界各国の授業研究の実践とPLC構築の挑戦を支える出版本の準備に至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、平成29年8月末に渡米し、最初の1ヶ月は滞在国・都市での生活セットアップにかなり追われたために本研究課題に即した調査等の前進を図れなかったものの、平成29年10月以降にPLCの検証を共同研究者とともに実施できたことから、本研究課題の(1)についてはおおむね順調に進展したと言える。 本研究課題(2)については、現在、共同研究者および滞在都市の教育関係者の支援を受け、マサチューセッツ州でPLCとして運営されている学校の実地調査を4月末以降に計画中である。研究計画でもこの検討課題(2)の調査分析は平成30年2月~8月を計画していたことから、本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の探究によって狙う重要知見の導出は、研究課題(2)の実地調査とそれに基づく基課題知見との比較検証にかかっている。したがって、平成30年4月末から開始する実地調査を継続的に行い、多様なPLC学校の実践を収集していくことが本研究課題の今後の推進方策となる。また現在、研究課題(1)の成果に基づき、共同研究者と英語論文の執筆計画を勘案中である。研究課題(1)の成果が英語論文として実現すれば、本研究課題の探究がさらに推進されることになり、本研究の知見が世界各地の教育実践のイノベーションへと波及する可能性がある。
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