研究課題/領域番号 |
15KK0083
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
角谷 快彦 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (20619176)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 介護行動 / 家計行動 / 老後の生活不安 / 金融リテラシー |
研究実績の概要 |
本研究は、人口高齢化に伴う医療介護費の急増に対応する、比較的文化的に近い地域同士の国際共同研究ネットワークを目指すものであるが、当該領域における実績は当初の想定以上に積み上がっている。具体的には、平成28年度には、分野の中では比較的インパクトファクターの高い国際学術誌に、複数の論文が採択された。 本研究は、当初、人口高齢化に伴う医療介護費の増加につながる個人の行動を、年齢、性別、学歴、収入、資産等の属性を用いて分析することを目的としていた。しかしながら、研究をすすめるうちに、そうした個人の行動には、上記属性の他に、被験者の家族の介護行動や家計行動、老後の不安および金融リテラシーといった、これまで想定していなかった要素が影響を与えていることが新たにわかった。このことは分野の研究を精緻化するにあたり重要な発見であるとともに、新規の研究課題をも生み出し、研究の幅を良い意味で大きく広げている。さらに、それらの要素をモデルに組み込んだ研究を含め、想定以上の数の論文を発表することができた。 さらに、チュラロンコン大学の研究者12名を広島大学に招いて共同シンポジウムを開催した他、学会発表も複数行い、さらに年度末には渡航先外国機関であるチュラロンコン大学の訪問研究者に着任した。同大学では、日本の調査と比較可能な家計調査のタイでの実施に向け、10名弱ほどの研究者を募り、次年度内の実施に向けた定期的な打ち合わせを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、当初、人口高齢化に伴う医療介護費の増加につながる個人の行動を、年齢、性別、学歴、収入、資産等の属性を用いて分析することを目的としていた。しかしながら、研究をすすめるうちに、そうした個人の行動には、上記属性の他に、被験者の家族の介護行動や家計行動、老後の不安および金融リテラシーといった、これまで想定していなかった要素が影響を与えていることが新たにわかった。このことは分野の研究を精緻化するにあたり重要な発見であるとともに、新規の研究課題をも生み出し、研究の幅を良い意味で大きく広げている。さらに、それらの要素をモデルに組み込んだ研究を含め、想定以上の数の論文を発表することができた。したがって、現在までの進捗状況は当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28度末にチュラロンコン大学の訪問研究員に着任したこともあり、当初の予定通り国際共同研究を一層進展させる。具体的には、日本で収集したデータと比較可能な形で設計する、家計行動調査をタイで実施し、同国の状況を分析するとともに、日本との比較の視座を取り入れた研究の遂行へとつなげる。また、アジア開発銀行研究所や周辺国の政府機関および大学とも協力し、同様の調査を周辺国にも展開する構想もあり、これらもタイ調査の進捗次第で実施を視野に検討する。 平成28年度の研究で、社会保障費の増額につながる、人々の老後の生活不安に、金融リテラシーが関係していることが新たにわかった。人々の老後の生活不安は、本研究テーマの分析に大きな影響を及ぼすため、今後の研究ではこのことを視座に入れた研究も併せて遂行する。 研究成果の発信としては、当初の計画通り、評価の高い国際学術誌への掲載を第一の目標とし、それにつながるフィードバックの獲得や情報交換をするための場として、学会発表や研究者訪問も実施する。また、研究成果を書籍にまとめる依頼が英国の出版社からあることから、出版に向けた原稿の準備にもとりかかり、助成期間内での刊行も目指す。 チュラロンコン大学での共同研究は、既に定期的な打ち合わせを複数の研究者と進めている他、周辺国の同大学とも打ち合わせを重ねている。また、当初の想定にはなかったが、チュラロンコン大学には、訪問研究員として、分野の近い他国の優秀な研究者が多く来訪しており、彼らとの共同研究も併せて進める方向で準備を進める。
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