本研究の目的はカリフォニア大学サンディエゴ校のロジャー・ゴードンと行っている企業行動の実証分析の進捗を図りつつ,訪問先のUCSDでワークショップを開催し国際的研究ネットワークを拡大することであった. 2018年3月末に国際学術会議をUCSDにおいて共催したことが研究期間全体における主要な成果である.集積推計法という分析手法に特化し通常の学術会議よりも専門性が高い会議を開催しえた.基調講演者に手法考案者のサエズと発展を主導したクレビンを招待し報告者は世界中から公募した.報告のなかでもニューイーによる批判は議論を巻き起こしサエズ・クレビンとの応報はSNSなどインターネットで話題となった.報告論文にはトップジャーナルに採択されたものもある.大学院講義に参照したいと海外からの問合せが最近でもある. 集積推計法は日本で未活用であったが,この手法を習得しえたことが30年度の重要な成果である.これまで観測が難しかった事象を可視化することができる強みを活かし,新プロジェクトを立上げた.第一はビッグデータを用いた消費税増税の分析で2019年度中に成果発表を予定している.第二はカリフォニア州立大の研究者と協議して企画したプロジェクトにデータ分析担当として参画しており,統括研究者が2019年度中に学会報告を予定している. ゴードンとの共同研究でも重要な成果を得られた.第一のプロジェクトは特定の租税回避スキームを軸にした実証分析であるが,とりまとめた論文は国際ジャーナルに挑戦中である.第二のプロジェクトはより総合的な分析であるが,議論を重ねるなかで難易であった計測手法の問題をフォックスが考案したマッチング最尤スコア推計で克服できるとの発見を得た.複雑なプログラミングが必要であるが新しくオーストラリア国立大の計量経済学者の参画を得ることができた.2019年度中に学会報告と論文投稿を計画している.
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