研究課題/領域番号 |
15KK0089
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宮原 泰之 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (80335413)
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研究期間 (年度) |
2015 – 2017
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キーワード | 評判 / 繰り返しゲーム / 不完全公的観測 |
研究実績の概要 |
本研究は無限回繰り返しゲームにおける評判に関する研究である。ひとりの無限に生存する長期的プレーヤーと1期間のみ生存する一連の短期的プレーヤーとの関係を分析している。短期的プレーヤーは各期にひとりのみいるものと想定している。ゲームは第1期から始まりプレーヤー達は毎期行動を選択する。各期に製品選択ゲームがプレーされる。本研究は不完全公的観測と呼ばれるクラスに属するものであり、短期的プレーヤーは各期の長期的プレーヤーの行動を完全には観測することはできず、選択された行動に関する不完全な公的シグナルを観測することができる。さらに、第1期の期初に長期的プレーヤーは特定の行動にコミットする可能性がある。特に、長期的プレーヤーは短期的プレーヤーの観点からすると悪い行動にコミットする可能性があることと各短期的プレーヤーは直近の有限期間の公的シグナルのみを観測できるという状況を分析している点が本研究の貢献である。 研究代表者は2016年2月から8月まで米国イェール大学に滞在し、共同研究者であるイェール大学のエデュアルド・ファインゴールド氏と研究を進めた。頻繁に打ち合わせを行い、着実に研究を進めた。代表者が所属したコウルズ研究所で毎週開催されている輪読会で本研究を発表し、出席者から多くのアドバイスを得ることができた。論文の執筆も着実に進められた。 研究代表者の帰国後、2016年12月には共同研究者のエデュアルド・ファインゴールド氏が神戸大学に2週間滞在する機会があり、直接合って共同研究を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究代表者は2016年2月から8月までの7ヶ月間、米国イェール大学に滞在した。そして、現地の共同研究者と頻繁に研究の打合せを行った。主要命題は導出されている。それは、各短期的プレーヤーが過去の公的シグナルをすべて観測できる場合と直近の有限期間のみ観測できる場合を比較すると、後者における均衡利得ベクトルで前者をパレート支配するようなことがあり得ることを明らかにした。研究会やインフォーマルな場で様々な研究者から、主要命題について意見を求めたところ、高評価を得たものと確信している。また、すでに論文の最初の版は完成させている。さらに、拡張した分析を本年度は進めてきた。拡張分析として、各期のプレーヤーは過去K期間に実現した公的シグナルの列が同じ場合には、そのプレーヤーはその期には同じ行動を選択しなければならないという制約を課した場合にどのような均衡利得が得られるのかを分析した。Kが無限大に近づくにつれて、各プレーヤーの均衡利得はステージ・ゲームのナッシュ均衡利得に近づくことを明らかにした。Kが有限の場合には、パラメータがある一定の条件を満たす場合には、Mが無限の場合よりも高い均衡利得を得ることができることを明らかにした。「今後の研究の推進方策」で説明するが、この分析の方向性の価値については共同研究者と一部合意ができていないものの、既存研究にはない新しい結果を得た。以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、主要命題をさらに発展させた分析を行う予定である。「現在までの進捗状況」で触れたように、拡張分析については、共同研究者との間で合意ができていない部分もある。これは分析に不備があるからというわけではなく、モデルの想定に関する研究者の好みの問題によるものである。今後は合意を形成できるようにモデルの想定を変更し、分析を修正する予定である。そのために、定期的に共同研究者とスカイプを利用して打合せを行う予定である。また、研究代表者がイェール大学に1週間程度の短期滞在をし、共同研究を進めることも検討している。主要命題に関する分析についてはすでに論文にまとめられているので、修正された拡張分析を完成させ、それを論文に加筆し、経済学の国際査読付きトップジャーナル(Journal of Economic TheoryやGames and Economic Behaviorレベル)に投稿することを目指す。
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