本年度は主に文献研究を中心にダイナミック・ケイパビリティの形成プロセスについて、Behavioral strategyの観点から幅広い文献レビューを行った。まず、いわゆるオーソドックスな競争戦略論の観点から文献レビューを行い、特に批判的な観点からオーソドックスな競争戦略論の中で解明されていない問題点の抽出に力を注いだ。そして、近年欧米で盛んに行われているBehavioral strategyの観点に注目し、ダイナミック・ケイパビリティの形成プロセスにおける企業行動理論(Behaviroal Theory of the Firm)に基づく分析観点の確立が重要であることを再確認した。その上、さらにこの研究の独自性を引き出すため、Behavioral Strategyの中で、近年再注目され始めている「プロブレム・フレーミング」という視点に注目し、それによるダイナミック・ケイパビリティ形成プロセスの解明に関する分析枠組みを試みることに辿りづいた。この分析観点に関する研究プロポーザールは経営戦略論研究で著名な国際学会Strategic Management Society Special Conferneceに採択され、レビューアから大変ポジティブなコメントを頂いた。なお、6月にカナダで開催さるこのSMS Special ConferenceはDynamic Capability論の生みの親であるDavid Teece氏が主催者であり、様々な最新の研究情報の入手には重要な機会である。今後、こうした国際学会で得られるフィードバックを元に、理論構築の精緻化及び実証研究の妥当性を図る作業を進めていく予定である。
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