研究課題/領域番号 |
15KK0095
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
松下 光司 中央大学, その他の研究科, 教授 (40329008)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2019
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キーワード | サービス / 不平 / 社会的比較 / グループ消費 |
研究実績の概要 |
本申請課題の目的は、応用研究も視野に入れつつ、基課題で提案したモデルを基礎分野の研究として精緻化することあった。2018年度の9月までは、米国Johns Hopkins University, Carey Business Schoolに滞在し、Yang 講師とこの課題に取り組んできた。18年度中には大別して3つの成果があった。 第1は、モデルの精緻化ができたことである。グループ消費の文脈(例えば、レストランでの同僚との食事)では、グループ内の他のメンバーが受け取るサービス水準と、自らのサービス水準とを比較することがあり、その比較こそが、サービス提供者への不平行動を喚起する要因となることを社会的比較の理論を基礎として導出した。
第2は、このモデルの妥当性を、インターネット上におけるシナリオ(レストランでの食事)実験によってテストし、概ね支持する結果を得たことである。モデルが予測した通り、社会的比較が起きやすい条件(関係性目標。例えば、より良い関係を構築するために一緒に食事をする)を設定した条件のほうが、他の条件(個人目標。例えば、自分の好きなパスタを食べる)よりも、不平意図は高くなった。加えて、不平意図が喚起されるメカニズムとして、「罪悪感」が寄与していることも明らかになった。
第3は、2つのコンファレンスにおいて、この結果がアクセプトされたことである。19年1月にインド、アームダバードで開催された、Asia-Pacific Conference of the Association for Consumer Research、および、19年2月に米国ジョージア州で開催されたSociety for Consumer Psychologyのカンファレンスにおけるワーキング・ペーパー・セッションで、この結果を発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
投稿可能な水準にいたるまで、いくつかの不足する点があるため、研究の進捗状況は遅れていると言える。3つの点で、不足点がある。第1は、研究結果の追試である。同様の方法(シナリオ実験)を用いながら、同じ結果が再現されるかを確かめる必要がある。
第2は、文化を要因として取り入れた実験である。グループ消費に着目した一つの理由は、不平行動の文化的差異の一端を明らかにすることを目指していたためである。本研究のモデルが理論的背景としている社会的比較の研究分野でも、文化的要因を取りいれた研究はいくつも見ることができる。本研究においても、文化要因を導入してモデルを拡張する必要がある。
第3は、現実に近い場面での実験によるモデルのテストである。近年の消費者行動研究では、シナリオだけではなく、現実の場面を用いたフィールド実験が頻繁に用いられるようになっている。本研究でも実際のグループ消費の場面における実験を目指していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べた3つの課題を19年度に次のようなスケジュールで取り組んでいく。19年4月-7月までの間にシナリオ実験による追試を実施する。これは、同じモデルを異なるシナリオや異なる被験者でテストするものである。
続いて、その実験結果を持参して、8月中に米国ボルチモアを訪問し、Yang講師と論文執筆に関するディスカッションを行うことになる。そこでは、文化要因を取り入れた実験、フィールド実験のアイデアを持ち寄り、それぞれの実施の詳細も議論する予定である。
帰国後の9月-12月までの間で、それらの実験を実施する。それらの結果をもとに、2月あるいは3月締め切りが予定されている、Society for Consumer Psychologyのカンファレンスに投稿することになる。
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