研究課題/領域番号 |
15KK0096
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宮田 幸子 立命館大学, 経営学部, 准教授 (10646764)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2019
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キーワード | education policy impact / overeducation / skill mismatch / labor outcomes / 高等教育の拡充 / 教育の収益率 / 家計調査データ / インドネシア |
研究実績の概要 |
今年度は、研究課題うちの二つ、若年労働市場における仕事と高等教育のレベルや専門分野のマッチング、及び教育投資の収益率についての研究を行った。 一つ目は、高等教育レベルと若年労働市場における仕事との学歴ミスマッチに関する研究を本格的に開始した。昨年にインドネシアにて把握した大学卒業生対象の就職状況追跡調査のデータ取得の申請を進めた。協力研究者らと該当機関への申請手続きを経て、インドネシアではほとんど研究されていない学歴ミスマッチの研究を可能とする詳細な就職追跡調査データを独自に入手した。主要な変数を取得し、データと質問項目や関連情報の翻訳・クリーニングを行い分析用データの準備を行った。この過程で重要な変数の問題・疑問点が生じ、その解明・確認作業を行った。このデータを用いて、先行研究で課題とされている若手の賃金労働者の仕事内容との学歴ミスマッチやスキルのミスマッチが生じているかを検証した。また学歴ミスマッチと賃金との関係について回帰分析を行った。分析の結果、仕事で要求される教育レベルと各自の教育レベルの合致率が既存研究に比べて比較的高いことが分かった。その理由として、調査した大学のレベルがインドネシア国では高いということが考えられる。また、仕事で必要とされるよりも高い教育レベルを持つ(教育過剰な)労働者の賃金は、そうでない者(教育相応な仕事に従事する者)に比べて低い賃金であることが分かった。これは欧米や日本の既存研究で見られた実証結果と一致するものである。これらの暫定的な結果をまとめ、国際学会や大学の研究セミナーなどで広く公表した。 二つ目は、インドネシアの個人の教育投資の収益率について教育政策の影響を分析に加え、その結果をまとめて学会や海外の大学のセミナーにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目的は、分析に必要な情報とデータを入手・整備した後、分析を実施し、その暫定的な結果をまとめ、発表することであった。概ねその目的は達成された。その理由は以下のとおりである。 1)昨年度確認した高等教育と仕事のミスマッチについて新たな調査データの申請手続きを行い、無事入手した。データのクリーニング確認作業に時間を要したが、関連する先行研究からインドネシアでほとんど実績がない実証研究を開始することができた。 2)本研究の基幹研究であるインドネシアの教育の収益率の実証研究について、教育政策の影響など新たに別の視点を取り入れて分析した結果をまとめた。また、インドネシアの労働市場の特徴を考慮した分析を追加して行い、その結果をまとめ、セミナーなどで発表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、今後は以下のように計画している。これまでの経緯から当初の研究計画に昨年は追加したものがあった。その後、研究協力者の職務変更やRA(リサーチアシスタント)の変更が重なった事、及びその他のインドネシア現地の協力大学・機関における諸事情により、若干整理・修正を行う予定である。また、基盤C研究からの拡張であることを考慮して、その成果に関連する研究を同時に継続して取り扱う。 1) 高等教育と仕事のミスマッチについて、独自に入手した卒業生追跡調査データの暫定的な分析結果、及び学会におけるコメントなどにもとづいて、他のデータとの統合やモデルの検討を行う。分析結果をまとめ、内外のセミナーや学会にて公表する。 2) 昨年行った就業セクター別の教育の収益率の分析結果をもとに、セミナーでのコメントなども参考にし、分析を進め、論文にまとめる。 以上の中から、今後の改善の余地があるものを優先的に選択し、継続していく予定である。
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