研究課題/領域番号 |
15KK0097
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
原 ひろみ 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (50605970)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 男女間格差 / 賃金格差 / 日本型人的資源管理システム / 内部労働市場 / ガラスの天井 / 目に見えない障壁 / 要因分解 |
研究実績の概要 |
労働力人口が低下し、将来の労働力不足が予測される中、日本では女性労働者の有効活用が強く求められている。しかし、賃金、昇進、労働力参加等の就業に関する複数の指標から今でも男女間格差の存在が確認され、女性の活用が十分に進んでいるとは言えない。そこで、本研究は先行研究とは異なる視点から新しい計量経済学的手法を使って労働市場における男女間格差に関する分析を行い、新たなエビデンスを発見し、格差発生メカニズムの解明を進めることで、格差解消のための政策提言につなげることが目的である。研究初年度の今年度は、男女間格差に関する分析を需要側の要因として指摘されているもののうち、「ガラスの天井 (glass ceilings)」や「床への張り付き (sticky floors)」と呼ばれる現象に焦点を当て、日本のデータを用いて予備的分析を行った。1990年~2015年の『賃金構造基本統計調査』の個票データを用いて、近年の男女間賃金格差の実態を賃金分布を通じた分析 (distributional analysis) を行うことで明らかにするとともに、時系列的な変化に関しても分析を行った。その結果、わが国ではガラスの天井や床への張り付きといった「目に見えない障壁 (subtle barriers)」が四半世紀前から観察され、かつ今でも持続していることが示された。また、分析結果に基づくと、目に見えない障壁が観察される理由として日本型人的資源管理システムに着目した解釈が可能であることが予想されるため、日本型人的資源管理システムの成り立ちは現状に関する先行研究のサーベイも重点的に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1990年以降についての分析はかなり進めることができ、かつ理論的メカニズムの検討についても目途が立っているところではあるが、もう少し行う余地があると考えている。また、1980年代のデータについても同様の分析を行い、より長期にわたる時系列比較を行うことで、さらに結果を精緻化できると考えられる。よって、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
さらに頑健な結果が得られるよう1980年代のデータにまで分析を広げる予定である。また、より妥当なメカニズムの解釈を行うために、先行研究のサーベイをさらに行うとともに、2017年度に渡米し、Neumark教授のもとで共同研究を行うことで、用いるべき計量分析の手法についてさらなる検討を行う予定である。また、海外の研究についてのサーベイを深めるとともに、海外のデータを用いた分析を行い、日本との比較を行うことで、観察される事象の背後で考えられるメカニズムへの理解を深める作業を行う予定である。
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