研究課題/領域番号 |
15KK0097
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
原 ひろみ 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (50605970)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 男女間賃金格差 / 賃金分布 / ガラスの天井 / 床への張りつき / 男女間昇進格差 / 男女間昇進プレミアム格差 |
研究実績の概要 |
昨年度、日本において個票データを用いて計量分析を行い、分布を通じた男女間格差の実態を1980年から2015年にかけて明らかにした。具体的には、日本では「ガラスの天井 (glass ceilings)」や 「床への張り付き (sticky floors)」と呼ばれる二つの「目に見えない障壁 (subtle barriers) 」が1990年以降観察され続け、特に2010年以降は床への張り付き現象は弱まっているものの、ガラスの天井現象はむしろ強まっており、二つの現象が今でも持続していることを明らかにしていた。 今年度は、カリフォルニア大学アーバイン校 (UCI) にvisiting researcherとして滞在し、昨年度までの分布を通じた男女間賃金格差の分析結果を論文としてとりまとめる作業を中心に行った。受入れ研究者であるDavid Neumark教授やその他のUCIのファカルティメンバーやビジターと議論を重ね、かつ助言を受けながら、日本型人的資源管理システムとの関連からメカニズムを明らかにした。さらに、ガラスの天井現象が近年強く観察される要因として、昇進の男女間格差とswimming upstream現象と呼ばれる昇進プレミアムの男女間格差が重要であることも明らかにした。分析結果を整理し、メカニズムを明らかにすることで、男女間賃金格差を縮小するのに必要なインプリケーションを導き、論文として完成させた。その論文を国際学術雑誌に投稿したところ、査読を受けたうえで採択され、2018年秋ごろまでに出版されることがすでに決まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究が想定外に早く進んだため、Neumark教授との議論の内容を取り込んで単著での発表としたが、国際学術雑誌 Labour Economicsに想定外に早く採択され、2018年秋ごろまでに出版されることが決まっているため、当初の研究計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
男女間賃金格差についての分析に関しては一定の成果を上げることができたので、来年度はさらに日本の労働市場における男女間格差に関する研究を発展させるために、Neumark教授から助言をいただきながらGiannina Vaccaro氏(UCI, Post-doctoral researcher)と共同して、子どものいる労働者への支援を企業に義務付ける法律(次世代法)の効果の計測を行う。使用データは総務省統計局『社会生活基本調査』、厚生労働省『21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児、平成22年出生児)』、『21世紀成年者縦断調査(平成14年成年者、平成24年成年者)』等を予定している。子どもがいることが女性労働者に不利益をもたらすchild penaltyという現象に諸外国の労働経済学者の関心が集まっており、最近特に研究成果が発表されているが、child penaltyを緩和する政策は世界でも珍しく、そうした取組みに効果があるのかは関心が高いと考えられ、諸外国にも成果を発信できると考えられる。
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