前年度にカリフォルニア大学アーバイン校 (University of California-Irvine) にvisiting researcherとして滞在し、受入れ研究者であるDavid Neumark教授やその他のUCIのファカルティメンバーやビジターと議論を重ね、男女間賃金格差についての分析を論文としてとりまとめ、国際学術雑誌 (Labour Economics) に投稿したところ、査読を受けたうえで採択され、今年度(2018年秋)掲載された。この論文は日本の男女間賃金格差を分布を通じて明らかにした初めての論文であり、日本型人的資源管理システムとの関連からメカニズムを明らかにした。さらに、ガラスの天井現象が近年強く観察される要因として、昇進の男女間格差とswimming upstream現象と呼ばれる昇進プレミアムの男女間格差が重要であることも明らかにした。 男女間賃金格差関しては一定の成果を上げることができたので、最終年度は日本の労働市場における男女間格差に関する研究をさらに発展させるために、Neumark教授とも議論を続けながら、Giannina Vaccaro氏(UCI)と共同して、子どものいる労働者への支援を企業に義務付ける法律の効果の計測にとりかかった。すなわち、子どもがいることが女性労働者に労働市場において不利益をもたらすchild penaltyという現象に諸外国の労働経済学者の関心が集まっており、最近特に研究成果が発表されているため、日本において政策介入に効果があるのかの検証である。具体定期には、『就業構造基本調査』の個票データの利用申請を行い、データを入手し、データクリーニングを行い、分析用データを構築した。そして、明確な因果関係の識別までは実施できなかったたが、記述統計量の計算を行い、傾向の把握を行った。
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