2019年度は、2018年度の国際学会で開催したパネル”Rethinking Development in Angola’s Rural Localities”での議論、および各種情報資料を分析し、アンゴラの開発や生計活動による社会統合に関するものに注目した。そして上記パネルに参加した研究協力者らと研究打ち合わせをおこない、アフリカの他の紛争後社会との比較検討をすすめた。アンゴラは、植民地期の農業開発によって導入された技術等が地域住民に十分に浸透しないまま、紛争が勃発し長期化した。政府主導でおこなわれた外国企業による開発スキームでの社会経済的統率や、地方都市の発展と集住、開発の行き届きにくい地方農村での代替的な生計戦略がおこなわれていることが明らかとなった。さらに、隣国ザンビアに逃れた元アンゴラ難民の生計活動に関する補足調査をおこなったところ、近年の難民への開発による統制を広範囲に活用しつつ、柔軟に生計を維持していることがわかった。特に、在来種のトウモロコシを政府や開発援助を通じて入手し栽培しながらキャッサバや野菜の販売によって生活を成り立たせていた。難民の地位が終了してからは、国民と同様高齢者への現金給付と、農業省やNGOによる開発援助を通じた肥料や作物種子の入手しかかなわず、難民であれば享受できた奨学金や職業訓練などといった人道支援のプログラムは一切届いていなかった。この知見をもとに、難民の社会福祉に関する論考を執筆し、元難民、国民と難民間での格差や不平等だけでなく、元難民のなかでの格差や不平等の拡大が重要な課題となっている現状を指摘し、公開した。
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