研究課題/領域番号 |
15KK0100
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
溜箭 将之 立教大学, 法学部, 教授 (70323623)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 信託法理 / エクイティ / 変容 / 比較法 / 英米法 / 法の継受 / アジア法 / 混合法 |
研究実績の概要 |
2016年8月23日から、アメリカ合衆国のハーバード・イェンチェン研究所及びハーバード・ロースクール東アジア法学研究所にて、客員研究員として海外研究に入った。 信託の伝播と変容という中核テーマを設定し、実体信託法解釈・法制史・比較法といった複数の視角から、英米法におけるエクイティの手続と実定法の交錯を検討している。より具体的には、18世紀イギリスから、南アフリカとインドを通る東回りルートと、北米と日本を通る西回りルートが、20世紀に東アジアに至る、そして東アジア内でも、東回りに香港・シンガポール、西回りに日本・韓国・台湾、そして21世紀に入って中国で改めて西回りと東回りの信託の伝播が交わるという歴史的な世界地図を描きつつ、比較法と法制史を組み合わせた研究を行ってきた。 同時に英語での口頭発表という形で研究成果の公表を進めている。2016年11月16日に、ハーバード・イェンチェン研究所にて、「信託の伝播と変容:イングランドから東アジアへ」と題して報告を行い、またハーバード・ロースクールとハーバード大学アジア・センターの共催で、2017年3月24日に「信託法のグローバルな伝播と日本法」と題して報告を行った。信託法理の国際的な伝播と、それが受容国でどのような形で実現されるかという、英米法のダイナミズムを浮き彫りにする試みに、報告の手ごたえを感じている。 海外の研究者とのネットワークの構築も進め、信託法研究者の関係では、アメリカとイギリスのほかに、カナダ、インド、シンガポール、香港、南アフリカなどコモンウェルス諸国の研究者、さらに日本とともに信託法を有する韓国、台湾、中国における信託法の研究者とのネットワークを広げている。2017年度にこれらの研究者をハーバード・イェンチェン研究所に招聘し、2日間のワークショップを開催すべく準備を進めた(本報告執筆時点で開催済)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は、アメリカでの在外研究において、国際的なネットワークの構築を当初の目的としており、順調に進展している。研究代表者自身、英米・コモンウェルス諸国・アジアで信託法制を有する諸国との比較、法制史的検討も、ハーバード・イェンチェン研究所やロースクールの図書館などを活用して進めることができた。 研究成果の報告として、平成28年11月にハーバード・イェンチェン研究所と、平成29年3月にハーバード大学アジアセンターとロースクールの東アジア法政研究所との共催のセミナーで講演を行った。研究進捗途上の報告と断った上での講演ではあったが、参加者とも様々な議論や意見交換ができ、手ごたえを感じている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年8月まで海外研究を予定しており、それまでにさらに文献・資料収集を行うとともに、ワークショップ開催(4月にハーバード大学)、シンポジウム参加(6月にカリフォルニア大学ロサンゼルス校)を通じて成果公表や各国の研究者との交流を図る。帰国後も、アメリカでのシンポジウムでの報告(9月にオハイオ大学・11月にハーバード大学)と論文公表を予定しており、こうした機会を利用し、信託法の伝播と各国における受容の比較法制史に関する具体的なテーマを探求した論文を世に問うてゆきたい。またこれらの国際的な交流の成果を、編著書として公表することを検討している。
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