研究課題/領域番号 |
15KK0102
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
栃内 文彦 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (50387354)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 工学教育 / 技術者倫理 / アジア的・イスラム的価値観 / グローバル化 / マレーシア日本国際工科院 / MJIIT |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東南アジア地域が日本および世界のモノづくりを支えているにもかかわらず、東南アジア諸国の価値観や考え方を踏まえた技術者(倫理)教育・研究が十分に行われているとは言い難いことに鑑み、マレーシア日本国際工科院(MJIIT)に滞在して、MJIIT所属の研究者とともに「アジア的」「イスラム的」な社会的文脈の中で技術者rが倫理的に適切に行動する上で考慮すべき価値観の分析を行い、それを効果的に教授することを可能とする技術者倫理教材パッケージの開発を目指すものである。今年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)平成29年8月19日の渡航開始までは、勤務校において研究代表者が担当する科目を代わって担当する教員らとの業務の引き継ぎやマレーシア滞在、MJIITで実施する研究の準備を行った。 2)渡航開始後(MJIITに客員准教授として着任したのは8月20日)、技術者倫理教育実施状況や日本の諸大学との連携状況などについての実地調査を行い、MJIIT特有の「Ningen-ryoku(人間力)教育」が、「人間力」概念のホリスティックな性質ゆえ、グローバル化が進む社会における多様な価値観を包含した技術者(倫理)教育に資する可能性を有することが示唆された。 3)技術者倫理の内容を含む必修科目「Ningen Ryoku」に担当教員の一人として加わり、受講学生を対象に、技術者の価値観に関する質問票調査を実施した。また、海外研究協力者(マレーシア、英国、オランダ)と共に、調査結果に関する意見交換や分析を行った。これらから得られた知見を反映させた、マレーシアの文化的文脈を踏まえた技術者倫理教材を開発し、「Ningen Ryoku」において開発した教材を用いた講義を行い教材としての有効性を検証した結果、組織レベルの観点から、価値共有型倫理プログラム確立の必要性の強調が有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、価値観に関する調査は、教職員をも対象とし、さらに、インタビュー調査も実施する予定だった。しかし、研究代表者が教員として科目を担当することに伴う時間的な制約から、これらの調査は行わないこととした(学生を対象とした質問票調査のみを実施した)。 ただし、それ以外は、予定していた価値観に関する調査、技術者倫理教育の実施状況に関する参与観察的調査、教材パッケージの開発のいずれも、ほぼ計画通りに実施することができた。 以上のことから、現在までの進捗状況は「おおむねね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
先述の通り、基本的には当初計画にほぼ沿って研究を実施しているため、基本的には当初の計画に沿って研究を実施する。すなわち、平成30年8月19日の日本帰国までは、引き続き授業を担当しながら、MJIITの技術者倫理教育の実態に関する調査と教材パッケージの開発を進める。 但し、8月の帰国に先立ち、7月中にMJIITが実施している短期間の海外留学プログラムに教員として参加することとなったので、開発した教材パッケージを使い、内容の改善を図る。 日本帰国後は、8月末から9月冒頭にかけてシドニーで開催される科学技術社会論に関する国際学会「4S」などに参加し、本研究の成果を発表するとともに、技術者倫理教育における「Ningen-ryoku」アプローチの有効性について、特に海外研究協力者のBalamuralithara Balakrishnan(マレーシア)らと研究を進める。
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