本研究の目的は、東南アジア地域が日本および世界のモノづくりを支えているにもかかわらず、東南アジア諸国の価値観や考え方を踏まえた技術者(倫理)教育・研究が十分に行われているとは言い難いことに鑑み、マレーシア日本国際工科院(MJIIT)に滞在して、MJIIT所属の研究者とともに「アジア的」「イスラム的」な社会的文脈の中で技術者が倫理的に適切に行動する上で考慮すべき価値観の分析を行い、それを効果的に教授することを可能とする技術者倫理教材パッケージの開発を目指すものである。今年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)昨年度に引き続き、技術者倫理の内容を含む必修科目「Ningen Ryoku」に担当教員の一人として加わり、技術者の価値観に関する質問票調査を実施した。海外研究協力者(台湾、インドネシア)と共に、調査結果に関する意見交換や分析を行い、昨年度に得られた知見も踏まえ、MJIITで今後行なわれる技術者倫理教育の標準教材パッケージを完成させた。 2)MJIITが実施する短期海外留学教育プログラム(GMP:Global Mobility Program)の一つを本研究者の本務校(金沢工業大学)で実施(7月4~26日)した。上記教材パッケージを用い、さらにデザイン思考も取り入れたGMPの前後で、本務校心理科学研究所の協力を得てPERMA Profiler調査を実施、学習意欲などが基本的に望ましい方向に変化したという結果が得られた。 3)両機関の間で互恵的に各種国際共同研究(教育実践を含む)を本研究課題の終了後も実施できる体制の構築に向け、MJIITに関わるコンソーシアム(JUC:Japan University Consortium)への本務校の加盟に向けた各種協議を主導した。 4)昨年度および以上の研究成果を台湾の逢甲大学における招待講演、豪州および米国で開催された国際学会で発表した。
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