2019年度は、2020年2月から3月にかけて、ルワンダに渡航し、学生ならびに教員を対象とした、ジェノサイドと人道的介入に関する意識調査を行った。なお当初計画していたワークショップから変更し、グループディスカッション方式で調査を行った。今回の調査では国際社会とは異なる介入者、ジェノサイドの現場における救出者(rescuerもしくはsaver)の設問を追加したところ、参加者の多くが身近な問題と感じることができたためか、これまでよりも活発な意見を集めることができた。 救出者とは、1994年4-7月のジェノサイド期間中において、犠牲者を匿うなど、ジェノサイドの犠牲者のために行動した人々のことである。しかしながら、救出者の行為はルワンダ国内においても知名度が高いとはいえず、さらに匿ったことが露見して犠牲者とともに殺害された事例などもあり、現在でも報復を恐れて公言できないなど、その詳細は不明な部分が多い。 しかしながら調査参加者は、具体的なジェノサイドの情景を思い浮かべつつ、自分自身の取りうる行動という観点から、救出者の倫理的困難について意見を述べた。自身の倫理的信念と実行力との乖離、自身や家族への危害の恐れ、、救出者として利他的に振舞える時間的限界といった、実存的問題としての介入の困難さについての意見が出された。 また犠牲者とともに殺害された救出者遺族の話として、母が家族を守るために、救出者として死んだ父の話を子供に伝えていなかった事例など、実存的な事例を収集することができた。
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