研究実績の概要 |
今回の国際共同研究において、申請者はチェンマイ大学民族学開発学研究所(Chiangmai University, Center for Ethnic Studies and Development)において「近代法制度におけるマイノリティの固有法と法化現象」に関する研究活動を行った。また同時にタイ北部を中心に山地民の生活改善を目的として活動するNGO、Bahn Ruam Jai Projectにおいても共同研究を実施した。 世界各地に住む少数民族は、その数の少なさ、また政治的地位の低さのため、自らの固有法を居住国の実情に合わせ適応していくことが求められる。固有法をどのようにして近代法体系とすりあわせるか、という問題については、すでに多くの議論が法学はもちろんのこと人類学・開発学のフィールドから研究がなされている。だが加えて、そうした近代法体系とすりあわせられた固有法が、近代法と同じように法化現象を起こしている状況を生み出していると本研究では仮説を立て、その解明に着手した。 実際にはタイの少数民族であるモン族の村落内での商品購入や伝統的な婚姻・離婚において、近代法に広く見られる法化現象があることが確認できた。加えてアメリカのモン族コミュニティにおいても同様の現象が生じていることが確認できた。これらの現象は、モン女性へのDVと深く結びついていることについても確認し、いずれも国際学会を通じて報告した。さらに本研究は特定の一民族だけをとり扱う研究ではなく「法制度をマイノリティのためにどのように整えるか」という広い問題設定をすることで、日本国内の政治的弱者に関する研究や、海外に居住する日本人コミュニティについてもその活動について法化現象が生じている様を各種国際学会で報告した。
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