研究課題/領域番号 |
15KK0106
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
森山 葉子 国立保健医療科学院, 医療・福祉サービス研究部, 主任研究官 (10642457)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 介護者支援 / プログラム評価 / 介護保険 |
研究実績の概要 |
世界一の高齢国でありながら、わが国の介護者支援策は欧米に比して遅れている。一方、さらなる高齢化や財政の逼迫に伴い、在宅介護がますます推進され、家族介護者の負担を軽減しつつ在宅介護を継続するために、介護者支援の実態把握と具体的な支援策に関する研究が必要である。本研究は、米国The University of Utahに滞在し、介護サービスおよび介護者支援について日米比較を行うことで日本の現状をより客観的に把握し、さらに具体的な介護者支援として、同大学が周辺機関と共同で実施した介護者支援プログラムの日本への導入を検討するものである。本年度は、2016年7月~2017年2月まで同大学のCollege of Social Workに滞在し、同教員や周辺機関の研究者らと以下の共同研究を行った。 ①同大学および周辺機関が共同で実施した介護者支援プログラムについて、開発方法、プラグラム内容、導入方法、プログラムの評価方法、課題等を議論し、日本への導入に向けた基盤構築を行った。 ②日本の介護保険制度を種々の会合で紹介し、日米の介護サービスや介護者支援の現状とその違いを議論した。日米比較を介すことで、より日本の状況を明確に把握できた。 ③以前より取り組んでいる、緊急ショートステイサービスを整備し介護者の不安を払拭することで、施設入所移行せずに在宅介護を継続できた際の経済効果を、介護報酬制度の加算の変更も含めより詳細に試算し、先方の教員らと共著で日米双方の視点を含む共同研究を、国際学会において学会発表を行った。 さらに、The University of UtahにおいてCollege of Social Workだけでなく、Public Health やHealth Managementの領域等の研究者ら、および周辺機関の研究者や行政職員等とのネットワークを形成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年7月~2017年2月までCollege of Social Work, The University of Utahに滞在し、研究実施計画の通り、同大学および周辺機関が共同で実施した介護者支援プログラムについて、その開発方法、プラグラム内容、導入方法、プログラムの評価方法、プログラムの見直し方法、課題等を議論し、日本へのプログラムの導入に向けた基盤構築を行うと共に、日本の介護保険制度について種々の会合において紹介し、日米の介護サービスや介護者支援の現状把握とその違いを議論し、日米の比較を通して日本の介護に関する状況を把握した。また、日本における介護状況のデータを用いた共同研究を行い、日米双方の視点からの解釈を含めた学会発表を行い、共著論文執筆中である。 さらに、学内において、滞在したCollege of Social Workの領域だけでなく、Public Health やHealth Managementの領域等の研究者らとの交流、および周辺機関の研究者や行政職員、実務者らとも交流を図ることができ、将来の共同研究につなげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカにおける介護サービスや介護者支援の状況を把握する中で、アメリカでは高齢者の権利が法律に謳われ、一方で、宗教や教会が生活困難者の救済に大きな影響力を持ち、寄付の習慣も根づいており、介護や社会保障に社会保障に対する根底にある考え方が日本とは異なることを実感した。具体的なサービスや支援の内容のみならず、その背景にある文化や習慣を含めて比較を行う必要性を再確認した。こうした視点を持ちつつ、引き続き、介護者支援プログラムの日本への導入の検討、および介護に関わる日米比較を行っていく。 介護者支援プログラムについては、介護者への教育テキスト等の作成において、翻訳と同時に日本の文化に即した内容にすること、またプラグラムの実施において、優秀なソーシャルワーカーの確保等、導入には大きなハードルがあることがわかったため、これらを緻密に検討していく。また、米国における当プログラムと類似したプログラムの把握・検討を実施する。さらに、日本のデータを用いた分析について、米国の視点からの解釈を含めた共著論文の執筆を進める。滞米中に形成したネットワークを今後も活用し、さらにその輪を広げて、国際共同研究を進めていく。
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