研究課題/領域番号 |
15KK0107
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
関谷 泰弘 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 総務部, 係長 (80727397)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 来館者開発 / 鑑賞者開発 / ミュージアム・マーケティング / ミュージアム・マネジメント / アート・マネジメント / オーディエンス・ディベロップメント / 博物館経営 / 博物館学 |
研究実績の概要 |
ミュージアムにおける鑑賞者開発(Audience Development)は、新規来館者の獲得及び既存来館者との関係の構築を目指すミュージアムの戦略的アプローチを指す。しかし、日本では事例に乏しく、米国・サンフランシスコ・アジア美術館にて評価担当マネージャーと共同で調査・研究を実施することにした。2017年度は4月よりアジア美術館に滞在し、主に同館で実施されるイベントを対象にその鑑賞者開発の効果を測定することを目指した。 アジア美術館で実施している22のイベントを対象に、アンケート用紙によるイベント参加者への調査(n=426)を、一般来館者への出口調査(n=259)と比較しながら、非来館者、イベント参加者、会員の3グループ、計19人へのフォーカスグループと合わせて、イベントの効果を測定した。効果は、来館者開発の3要素である美術館に縁遠い非来館者の増加を目指す「多様化」、既存来館者と同じコミュニティにいる、未だ来館していない潜在的来館者への「拡張」、既存来館者との関係を深める「深化」から分析した。その結果、ミュージアム・イベントは、来館頻度の低い既存来館者の来館頻度の向上という「深化」には効果があるが、「拡張」の効果はコミュニティ・イベントのみ、「多様化」の効果は現代アートのイベントのみで限定的だった。そのため、鑑賞者開発には、イベントだけでなく、複数の企画を組み合わせる戦略的なアプローチが必要だと指摘できる。 また併せて、鑑賞者開発の取り組みを行っている米国を中心とした計11のミュージアムの担当者にインタビューを行った。その結果、鑑賞者開発の取り組みは、事業内容だけでなく、戦略と組織体制が重要であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度に開始した本研究だが、2016年度は渡航準備に費やし、2017年2月に米国・サンフランシスコ・アジア美術館に渡航することができた。2017年度は2018年2月まで同地に滞在し、当初の予定通り、調査・研究を行うことができた。2月~9月まで来館者出口調査を行い、イベント参加者調査は4月~9月に実施した。また、9月にはアジア美術館の会員、イベント参加者、未来館者の3グループを対象にフォーカスグループを行った。フォーカスグループはある特定のカテゴリーに属するグループごとにグループインタビューを行う手法でカテゴリーごとの特徴を際立たせる効果がある。この調査により、それぞれの美術館やイベントに対する印象の際など、それぞれの特性をつかむことができた。海外ミュージアム調査も当初の予定通り、鑑賞者開発に特徴的なミュージアムの担当者合計11人にインタビューを行うことができた。 研究発表については、上記の調査・研究を通して、日本ミュージアム・マネジメント学会において、日本語による査読付き論文1本の発表及び国際博物館会議マーケティング・PR部会において、共同研究者と共同で1本の研究発表をすることができた。 以上より、研究は概ね順調に進展していると結論付けた。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は研究最終年度であるため、これまでの成果をまとめ、論文及び国際学会における研究発表を予定している。
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