本研究は中央アジア諸国の国際関係において影響力を持つ日中米の対中央アジア政策をどのように位置付けているかについて、政策決定過程の理解と理論的な説明を試みた。これらの国がそれぞれに競争や協調をしつつこの地域を全体として扱っているにもかかわらず、先行研究では二国間関係の事例のみが扱われてきた。本研究はこうした研究上の問題点を克服し、日中米が中央アジア諸国とどのような関係を築いてきたのか、その戦略はいかなるものだったのかを論じた上で、これらの国々がそれぞれ構築している地域的な外交枠組みの実態と相互の関連性を明らかにしてきた。そしてこれらの国の中央アジア地域におけるソフトパワー構築の試みを比較し、それらが現在どの段階にあるのかを解明した。さらに本研究は、日中米がこの地域において行っている多国間と二国間そして草の根プロジェクトの各レベルの分析も試み、かつ経済、外交・安全保障、世論とアイデンティティの観点から比較を行ってきた。その結果、日中米において対中央アジア政策の重要性と位置づけの違い判明した。中国の場合、資源開発と貿易以外において近年のインフラ開発が最重要課題とされており、その中で中央アジア地域に発展をもたらすというより、中国の経済発展の維持が重視されている。米国の場合、ロシアや中国の拡大の制限という政治的な目標以外にアフガニスタンにおける米国の戦略を成功させる意味でも中央アジア地域は非常に重要な位置づけにある。そして、日本の場合、中央アジア地域における政策上の位置づけは今後の重要な課題であり、現時点において資源開発、経済的なフロンティアに過ぎないものになっている。
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