本研究の目的は、日本における非正規雇用の増大を含めた雇用システムの変容について、国際比較の視点から明らかにすることである。第一の研究課題は若年非正規雇用に関する日米比較を行うことであり、第二の研究課題は、ハイテク企業における正規雇用・非正規雇用エンジニアの人事管理の日米比較を行うことである。平成28(2016)年度に、米国ハーバード大学ライシャワー記念日本研究所に滞在し研究を推進した。平成29(2017)年度は日本にて文献調査及び実態調査を実施した。 平成30(2018)年度は、それらの成果を踏まえ、日本において下記の研究を行った。 第一に、ハーバード大学アンドルー・ゴードン教授との共同研究である、日本の非正規雇用政策について引き続き研究を行った。具体的には以下の事が明らかとなった。日本の非正規雇用政策は2010年頃に転換点があり、その後急激に拡充していった。その方向性は、内部労働市場への包含を目指す点が極めて特異である。加えて2016年以降は官邸主導で「同一労働同一賃金」の方針が追加され、日本の非正規雇用政策はさらなる転換点を迎えている。これらについて、シンガポールデザイン工科大学のニランジャン准教授と議論をしながら論文のまとめ作業を行った。なお、日本のパートタイム労働に関する国際的な視点による優れた書籍に関して書評を執筆した。その後、著者と意見交換を行う機会にも恵まれた。 第二に、米国ボストンにおけるイノベーション・エコシステムと地域労働市場に関する研究を推進した。平成28(2016)年に実施した米国実態調査のデータに加え、東京で推進したイノベーション・エコシステムに関する研究内容について、民間企業の技術研究所にて講演を行い、意見交換を行った。 第三に、エンジニアの人事管理の日中韓比較について既刊原稿の英語翻訳を行った。
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