本研究課題は,筆者がこれまでに進めてきた,協働を含むいくつかの異なった教員研修における数学教師の学習についての研究を,国際共同研究に発展させるものである.元々の課題では,数学教師らによる「地域・地方の研究会」と大学で推進される現職教員の「教職大学院での研修」という,形態の大きく異なるわが国の二つの教員研修を取り上げ,各々においていかなる教師の学習が実現されているのかその実態と質を明らかにし,個々の教員研修の役割を明確にすることを目的としていた.そして本研究では,分析対象とする教員研修をヨーロッパのものも含め拡大し,国際比較研究により,数学教師の協働を含む種々の活動(教員研修等)の個々の役割と,個々を持続的に実現しさらにスケールアップするための条件と制約を明らかにすることを目的としていた. 2017年度よりフランス・リヨン高等師範学校フランス教育研究所に滞在し,2018年度は,フランス滞在期間1年間の残り3分の1を終えた.昨年度同様,残りの滞在期間も,非常に多くの研究活動ができ研究は大きく進んだ.とりわけ,多くの招待講演を実施するとともに,受入国際共同研究者であるLuc Trouche氏を中心とする研究チーム (EducTiceチーム) のメンバーと共同でのデータの収集や分析,論文の執筆などができた.さらに昨年度は,フランス滞在を生かし,スイス・ローザンヌのヴォー州教育大学との算数・数学授業,及び算数・数学の教員養成に関する共同研究を発展させることができたのは大きな成果と考える.
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