2018年度には、報告者が日本に帰って、本研究課題の3年目の共同研究を行った。ワシントン大学のハ・ヨンチュル(Ha Yong-Chool)教授と遠隔で連絡を取りながら、東アジアの政治における伝統と近代の多様な関係性に関する思想と制度を総合した共同研究をまとめる作業を行うとともに、同じテーマに関して、報告者の専門である思想分野における研究をも続けた。 共同研究の部分では、明治時代の日本と1960-70年代の韓国における伝統と近代の問題をテーマにした比較歴史研究(comparative historical research)をまとめる作業を実施した。2019年3月8日にワシントン大学でコロキウムを開催し、「Japanese Factors in Building Understanding on Confucian Tradition in Modern Korea」というタイトルの講演を行うことで、研究成果の一部を国際的に発信した。 思想分野の研究では、東アジア国際関係に関わる認識の中で、対等な国際関係を表すことで西洋近代の国際関係思想との共通性を持つ「交隣」について研究を行った。まず、朝鮮王朝前期に、日本や女真との関係を形成する中で、交隣概念が如何に具体化されたかについて研究し、その成果をまとめた韓国語の論文を漢字圏の概念史を代表する雑誌である「Concept and Communication」に発表した。さらに、ハ教授との共同研究で獲得した方法論を応用ことによって、「交隣」に対するこれまでの研究を制度と思想を含む総合的なものに拡大する可能性について気づき、2018年11月に島根県立大学で開かれた研究会の場でこのアイデアに基づいた試論について報告を行うことで、日本の研究者と共同研究の成果の一部を共有した。
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