運動学習を予測する脳ネットワークの解明およびそのネットワークに基づいた新しいリハビリテーション介入の開発を目的とした実験を実施した。 運動課題としては、研究室で確立した手指巧緻運動課題(Sequential Visual Isometric Pinch Task:SVIPT)を用い、初日に安静時の脳活動測定を実施、加えて30回を5セットの練習を行った。2日目には練習のみを30回5セット、そして1週間後に30回1セットを実施した。 脳活動に関しては、運動練習前の安静時脳ネットワークを脳磁図(MEG)により計測、1週間後の運動技能との関連を検討した。また、MEG測定中に運動が可能となるディバイスを開発し、運動時の脳ネットワークについても測定した。解析では、5秒に1回の単純な手指運動時の脳活動からβ周波数帯域における事象関連脱同期(ERD)を測定し、機能的な一次運動野領域の同定を行った。その後、機能的な一次運動野と関連のある脳領域について、Amplitude Envelope Correlation(AEC)により全脳レベルでのネットワーク解析を実施し、運動技能変化との関係を検討した。結果、初日の安静時脳ネットワークにおいて、対側M1と対側前頭葉領域におけるlow-Gamma帯域におけるAECと7日後の運動機能変化の間に有意な相関を認めた。 上記の研究に加え、新しい介入方法として巧緻運動における両側性転位効果について、行動学的および脳波による脳活動計測を実施した。課題はSVIPTとし、右手で練習する群と左手で練習する群における練習前後の右手運動機能変化について検討した。その結果、本課題において練習手での差は認められず、高い両側性転移効果が見られた。一方脳活動に関しては、対側手による練習群でのみ一次運動野の活動向上が見られ、同側手練習では広範なネットワークの関与が示唆された。
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