本研究の主な目的は、既存の華人研究において看過されてきた台湾の位置づけを、日本、台湾、インドネシアの研究者による国際研究チームによって共同で調査することで、華人研究を相対化し、新たなパースペクティブを提示することである。本研究では、初年度である2016年度に、研究代表者がインドネシアと台湾に長期滞在し調査研究を行った。その上で、研究期間を通じて、計8回の国際セミナーを日本、台湾、インドネシアで主催・共催し、研究成果を共有した。また、東アジアと東南アジアの研究者の交流をすすめた。これまでの華人研究は、中国大陸と移民先の二地点との関係を中心に論じられてきたが、本研究では、台湾の位置づけを歴史・現代の双方において明らかにした。 2019年度は、これまでにインドネシア科学院と台湾の国立政治大学の共同研究者と開催した、国際セミナーの成果内容の刊行に向けて打ち合わせを行った。さらに、これまでの共同研究者以外との国際的な研究交流もすすめた。具体的には、シドニー大学と共催で2019年12月に国際ワークショップ“Towards a New Nanyang Studies: Examinations of Tionghoa and Tsinoy beyond the ‘Sinophone'”を国内で開催し、2020年1月には、インドネシア大学と共催で、若手の研究者、作家、ゲーム制作者、ブロガーなど様々な表現者を招聘し、2日間にわたり“'Tionhoa’Millenials: Writing Symposium”を行った。後者のライティング・シンポジウムは、これまでの研究では言及されていないミレニアル世代の華人のダイナミズムに関する一般書の刊行を前提として、様々な世代の研究者に加えて、作家、ゲーム制作者、NPO代表、カウンセラーなど、各分野で活躍するミレニアル世代らが一同に会し、議論を交わした。
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