研究課題/領域番号 |
15KK0119
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安田 拓人 京都大学, 法学研究科, 教授 (10293333)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 量刑 / 精神の障害 / 責任能力 / 司法精神医学 / オーストリア刑法 |
研究実績の概要 |
平成28年度においては、交付申請を行ったのが年度後半であったため、研究期間が短く、渡航も、ドイツ国内におけるベルリン等各地におけるテロ発生状況を考慮し、テロリスクを慎重に見極めるため、現段階では控えざるをえなかったのが偽らざる実情である。 平成28年度においては、渡航した際における研究の実質化を図るための、国内においても実施可能な準備的・基礎的研究を精力的に遂行した。具体的には、基課題である基盤研究(B)の遂行のために開催している裁判官・刑事法学者・司法精神医学者との研究会の場を活用し、まずはオーストリア刑法につき文献的検討により到達しうる限界点までの理論的考察を行った。そこでは、責任無能力に至らない責任能力の減少が責任を低減させる方向で考慮されていることが確認されるとともに、刑法34条において、様々な刑事政策的考慮から、刑罰を加重する方向で考慮される事情が列挙されており、それぞれの考慮ファクターのもつ意義に関する理論的解明を行った。 もっとも、それぞれの考慮ファクターが実際の裁判における量刑判断に際してどのようなウェイトを占めているのか、実際の判断にどのように影響しているのかについては、文献的検討からは十分な解明に至らず、本国際共同研究加速基金による海外渡航により解明を要することが明らかとなった。 また、平成29年度前半には、裁判所の方から、各論点につき判例上重視された事情に関する包括的検討の成果報告が予定されており、平成29年度夏に1回目の出発を予定している海外渡航においては、この成果との比較検討をもなしうるよう、平成29年度前半においては準備を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度においては海外渡航を実施していないので、当初の計画通りの進捗状況にあるとは言いがたいが、第1回目の出発に向け、海外での現地調査等を実質化しうるような準備的・基礎的研究は精力的かつ効果的に実施できているため、(2)の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本国際共同研究が円滑に実施できるためには、何よりドイツにおけるテロリスクが無視できるレベルまで低下することが不可欠の前提であり、そうした前提のもと、第1回目の渡航を実施することが何より肝要である。 平成29年度においては、裁判所の方で予定されている、各論点につき判例上重視された事情に関する包括的検討の成果報告を受けて、第1回目の渡航時に、この成果を踏まえた調査研究をもなしうるよう、裁判官・刑事法学者の協力を得つつ着実な分析を進めていくことが必要である。
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