研究課題/領域番号 |
15KK0124
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内田 交謹 九州大学, 経済学研究院, 教授 (80305820)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2017
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キーワード | コーポレートガバナンス / 独立社外取締役 / 機関投資家 / 業績連動型報酬 / 監査等委員会設置会社 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトでは、University of Utah のJeffrey Coles 教授と共同で、①日本のコーポレートガバナンス改革に関する実証研究、②国際財務データを用いた企業のリスクテイキング、リストラクチャリングに関する研究を行う。 本年度はまず、渡航前にデータベースの構築を行った。テーマ①については、日本のコーポレートガバナンスに関するデータベースを整備するため、Nikkei NEEDS Cges を購入し、過去購入分と合わせて、2003~2015年の13年分のガバナンス・データベースを構築した。さらに、コーポレートガバナンスが株価に与える影響を分析可能にするため、Nikkei NPM を購入した。テーマ②については、世界50か国以上の企業財務データを整備し、企業の多角化度に関する新しい変数の作成に着手した。 なおテーマ①については既に分析も開始しており、会社法改正やスチュワードシップコード及びコーポレートガバナンス・コードに関連する情報が公開された際の株価反応と独立社外取締役選任数、機関投資家持株比率の関係等について分析を行った。 これらの準備を行ったうえで、平成29年3月12日より、University of Utah に滞在している(途中、3月19日~26日は一時帰国)。博士大学院生のJason Sandvik の協力を得ながら、研究室、インターネット、プリンタ、電子ジャーナル、データベースなど、University of Utah における研究設備へのアクセスを確認した。また、Jeffrey Coles 教授と毎週木曜に共同研究打ち合わせを行うこととなり、日本のコーポレートガバナンス改革の概要及び、これまで整備してきたデータ、分析結果を説明し、議論した。今後、ディスカッションを重ねながら、焦点を当てるべきテーマを絞っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渡航前に、共同研究に必要な日本で揃えるべき基礎的なデータベース構築を完了でき、アイデアが出るたびにパイロット・テストを実施できる状態である。University of Utah では、個室の研究室を提供され、研究に集中できる環境である上、国際データに関して予定していたデータベースへのアクセスが可能であることが確認でき、実証分析の環境が整った。また、研究セミナーも充実しており、最新の研究成果に触れやすい環境であることが確認できた。 Jeffrey Coles 教授と日本のコーポレートガバナンス改革に関するディスカッションを行い、取締役会構成に関する新しい変数作成や業績連動型報酬に関する新しい分析アイデア、委員会設置の合理性の検証など、既に数多くの研究アイデアの着想に至っている。Coles 教授からは毎週一回ディスカッションの時間を設定してもらっており、またアポイントのない時間帯でも、気軽にディスカッションを行える関係にあるため、これから1年間の滞在で、着実に研究を進められると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
Jeffrey Coles 教授とは既に3件以上の具体的な分析テーマを議論しており、今後も増える可能性がある。テーマによっては、細かいデータを手入力で収集する必要が生じるため、国際共同研究加速基金の代替要員確保の予算を用いて、アシスタントを雇用し、週3回、九州大学の内田研究室で勤務してもらっている。また内田研究室には、2名の博士院生と3名の修士院生、6名の学部生が在籍している。時間と労力のかかるデータ収集作業については、遠隔会議システムを用いて細かい指示を行いながら、アシスタント、大学院生の研究補助を活用する予定である。 University of Utah には、Coles 教授以外にもコーポレートガバナンス分野で顕著な成果をあげている研究者が複数おり、研究のクオリティを高めるため、彼らと積極的なディスカッションを行う予定である。また最新の研究成果を取り入れるため、ファイナンスのみならず、経済学・経営戦略・会計分野の研究セミナーにも参加するとともに、海外の学会・セミナーで可能な限り報告を行い、コメントを得る予定である。
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