本研究の目的は、海外と国内で双方から障害者福祉における「必要な知識」が「必要な人」に共有され継承される方法を、障害者・児の「生きるための知=リテラシー」として探索する点にある。それを「共に生きるための知=共生のリテラシー」として描き出し、共有するための方策を提示するところが特徴である。 研究は3つの面から段階を踏んで実施することができた。ひとつめは、海外調査と国内動向分析からリテラシー=「学習」に焦点をあてた理論研究である。私たちが能力=abilityを獲得する場合その社会的要因・技術的要因は見過ごせない。リテラシーを「学び得ていく」過程において動的にも果たされる点を解明し、柴田(2019)として上梓し、新聞書評で注目されるなど評価を得た。 ふたつめが、Center on Disability Studiesを拠点にアメリカでの長期滞在を基にした「日米の障害者の共生のリテラシー研究」である。特に障害者を含めた多様性の実現をめざすハワイを拠点に、リテラシー教育から社会参加=就労までのテクノロジー視野に入れたアプローチは、Learning Disabilityから障害者就労のQualified論まで論じることを可能にし、複数での国際会議での講演・報告につながった。 みっつめは、上記を生かした「障害者の共生の技法を実現しうるようなテクノロジーの実践」であり、具体的にはアプリおよびデータベースのメソッド開発および試行である。その成果は着実にShibata. et.al (2019)などとして著名誌に掲載され、また障害児のEdTechアプリとして、新しい科研費研究に発展している。さらに最終段階でCovid-19 Crisisが発生したため、本研究で準備していたリテラシー・データベースを応用して「学びの危機」に直面した障害児を技術的に支援する社会貢献を行いメディア等でも評価いただいた。
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