研究課題/領域番号 |
15KK0138
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
堀井 悟志 立命館大学, 経営学部, 教授 (50387867)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 洗練された原価計算技法 / 原価計算 / 価格決定 / 原価管理 / 管理会計 |
研究実績の概要 |
日本企業における管理会計実践の経験的データをもとに,共同研究者と分析を行った結果,支援型管理会計としての原価改善の実施の一方で,予算管理や業績管理などの支配型管理会計としての利用が機能していないことが確認された。また,これまでにコンティンジェンシー理論に基づいた明らかにされた洗練された原価計算技法の利用環境条件から考えると,リサーチサイトでは,洗練された原価計算技法を採用すべきであると考えられるが,データを慎重に確認したところ,リサーチサイトでは当該技法の採用がないことが確認された。欧米の管理会計の理解に基づくと,この状況下においては,リサーチサイトはいい業績を残せないと考えられる。 しかし,実際には,リサーチサイトの業績は右肩上がりに向上しており,業界内での売上高の順位も,それに応じて上昇している。つまり,好業績を残しているといえる。この実践と理論との乖離を説明するために,原価計算の管理会計機能である価格決定および原価管理の同社の実践に着目し,検討を行った。 その結果,原価管理に関しては,高度に確立された生産管理や品質管理によって実現されていることが確認された。また,価格決定については,同社が採用している価格決定用のコストテーブルには原価計算の不十分さに起因して重大な問題がある一方で,強力で長期的関係を有している顧客との間には,別途,過去の取引実績と交渉によってきめられた価格決定基準が存在しており,それが同社における価格決定において規範を提供していることが明らかにされた。つまり,一企業内の実践ではなく,組織間関係にまで視野を広げることで,原価計算の必要性に関する説明力のある理解を得ることができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年8月に渡英したうえで,順調に論文構想の検討を進め,第一論文の執筆を行っている。その第一論文については,3度の学会・研究発表を行い,2018年5月ごろには英文ジャーナルに投稿予定である。一方で,第二,第三論文についても,すでに構想の検討を始めており,全体としてその進捗は順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
まず,第一論文の英文ジャーナルへの投稿を行う。そのうえで,2018年9月までのイギリスでの滞在期間に,第二論文,第三論文の構想検討を進め,少なくとも一方については,滞在期間中に英文ジャーナルに投稿する予定である。 なお,第二論文,第三論文については,シェフィールド大学の共同研究者の体制(実質的な執筆者)が異なるため,同時並行的に進めることが可能であると考えている。 また,6月末には,共同研究者の一人であるChris Akroyd氏がシェフィールドに訪問予定であり,その機会を活用し,プロジェクトの推進を図る予定である。
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