会計コントロールの基礎としての原価計算制度について,数量ベースの配賦基準を有する伝統的な方法は現代の競争環境下においては適していないとされているが,顧客との固定的な組織間関係とそれに基づく価格決定や,高度なオペレーション管理の仕組みが,原価計算制度の必要性を低減し,洗練された原価計算制度を使わずとも,生き残りには十分な利益の獲得が可能となっていることを明らかにした。また,これに基づいて,洗練された原価計算制度の必要性の要因として,定量的研究における質問項目の開発を行った。 さらに,日本企業における中間管理者による戦略形成プロセスにおいては,戦略という事実形成のなかで連続的かつ可変的なネットワーク形成がなされており,そのなかで,願望としての会計目標が扇の要のような戦略的結節点としての役割を有していることを明らかにした。先行研究では,会計は,その取引認識の範囲などを通じて,中立的というよりむしろ遂行的ではあるが,会計それ自体は何らかの実態の測定や評価であるとされているが,このケースから,戦略化と管理会計に関する先行研究同様に,会計の遂行的な役割を明らかにしつつも,戦略から切り離された願望としての会計目標の役割というこれまでには検討されてこなかった会計の可能性を明らかにした。また,戦略化という枠組みのなかで,単なるミクロな戦略形成だけではなく,期中管理という視点を導入し,戦略化のネットワークをより緻密に検証を行った。
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