研究課題/領域番号 |
15KK0147
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
泉田 渉 東北大学, 理学研究科, 助教 (20372287)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | ナノチューブ |
研究実績の概要 |
カーボンナノチューブに代表されるメゾスコピック一次元電子相関を正しく理解することが本研究の目的である。本課題では、国際的に活躍している理論および実験研究グループとの共同研究により、基課題に比べてより多角的な観点から理論を構築すること、また、より密接に実験を検証することを目指す。 量子伝導領域におけるナノチューブの電子状態を正確に理解するためには、低エネルギーの一粒子状態の定量的な解析が欠かせない。国内外の多くの研究者らは、従来、谷と呼ばれるバンド自由度が分離しているとの仮説に基づき、ナノチューブの電子状態を解析してきた。これに対し、本研究では、様々な螺旋構造のナノチューブの電子状態を、数値的及び解析的手法により理論的に調べ、多くのナノチューブにおいて谷が結合することを示した。さらに境界条件によっては谷が強く結合する場合があることを示し、従来用いられる谷分離描像からの大きな修正が必要となることを示した。また、トポロジカル物質の観点から解析し、トポロジカル不変量と端状態との間に一対一対応があること(バルク 端対応)をあらわに示し、さらに、外部磁場によりトポロジカル相転移が引き起こされることを明らかにした。 10月よりレーゲンスブルグ大学(ドイツ)のグリフォニ教授の研究室に滞在し、上記研究で構築した有効一次元格子模型をもとに電子相関効果を調べた。特に、典型的な電子相関の一つである超伝導相関がナノチューブに誘起される場合に、超伝導ギャップ中に端に局在した状態が生じる場合のあることを、トポロジーの観点から示した。 また、近隣大学のナノチューブの専門家によるセミナーの開催や、2017年度に開催予定のワークショップの企画を通して、様々な関連研究者との研究交流を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子相関効果の解析手法の出発点となる、微細構造を取り込んだ有効一次元格子模型を構築することにより、低エネルギーの電子相関効果を定量的に調べる事を可能にした。国際共同研究の実施により、超伝導効果などのメゾスコピック系における一次元電子相関に関する研究を推進することができ、さらには、ワークショップの企画など、今後の国際交流の推進に向けた準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究で明らかとした一粒子状態と、その効果を効率的に調べることの可能な有効一次元格子モデルをもとに、引き続き電子相関効果を解析的および数値的な手法により研究を推進する。さらに、ワークショップを共同で開催することにより、国際共同研究を推進する。
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