研究実績の概要 |
カーボンナノチューブに代表されるメゾスコピック一次元物質における物理現象を理解することが本研究の目的である。このため、電子の一粒子状態および電子相関効果を理論的手法により調べている。本課題では、国際的に活躍している理論および実験研究グループとの共同研究により、基課題に比べてより多角的な観点から理論を構築することを目指している。 これまでの研究により、ナノチューブの電子状態に対し、有限長ナノチューブの一粒子状態を明らかにし、微小ギャップやスピン軌道相互作用などの微細構造の効果を取り込んだ有効一次元格子模型を構築した。 本年度は、昨年度から継続して9月までと、また、2,3月の3週間の期間、レーゲンスブルグ大学(ドイツ)のグリフォニ教授の研究室等に滞在し、共同研究を実施した。すでに構築した有効一次元格子模型をもとに、典型的な電子相関の一つである超伝導相関が、ナノチューブに近接した超伝導体により誘起される状況を解析的および数値的手法により調べた。同様の状況として半導体ナノワイヤを超伝導体に近接させた系が知られており、マヨラナ粒子の探求が、現在、国内外の実験グループにより精力的に行われている。一方、ナノチューブに関してはあまり調べられていない。我々の研究により、半導体ナノチューブに着目し、有限磁場のもとマヨラナ粒子が現れることを示した。また、ナノチューブ表面の曲率効果と超伝導相関の共存によっても、トポロジカルな端状態が現れることを明らかとした。 6月1~2日には、レーゲンスブルグにおいて"Boundary effects and correlations in one-dimensional systems"と題したワークショップをグリフォニ教授と共同で開催し、15名の招待者による講演と8名のポスター発表を通じて関連研究者との研究交流を実施した。
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