カーボンナノチューブに代表されるメゾスコピック一次元物質における物理現象を明らかにすることが本研究の目的である。このため、電子系の一粒子状態および電子相関効果を理論的手法により研究する。本課題では、国際的に活躍している理論および実験研究グループとの共同研究により、基課題に比べてより多角的な観点から理論を構築することを目指している。 これまでの研究により、ナノチューブの電子状態に対して、量子伝導領域で重要となる微小ギャップやスピン軌道相互作用などの微細構造の効果を明らかにした。さらに、それら効果を取り込んだ有効一次元格子模型を構築した。これらの知見をもとに系の多彩な物理現象を調べてきた。 ブダペスト工科経済大学(ハンガリー)のモカ氏、ザーランド氏らと、カーボンナノチューブの電子相関に関して密度行列繰り込み群を用いた数値解析に関する共同研究を行い、特に、トポロジカルな端状態における電子相関の結果、左右の端付近に局在したスピン間に働く相互作用がナノチューブの長さによって強磁性的もしくは反強磁性的となることを明らかとした。 さらに、レーゲンスブルグ大学(ドイツ)のグリフォニ氏らと超伝導相関がナノチューブに近接した超伝導体により誘起される状況に着目して過年度から継続して研究を行い、ナノチューブ表面曲率により誘起されるスピン軌道相互作用によるヘリカル状態が存在する状況において、端付近にマヨラナ粒子が現れることとその詳細を数値的及び解析的手法により示した。
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