研究課題/領域番号 |
15KK0149
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本多 史憲 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (90391268)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 希土類化合物 / アクチノイド化合物 / 強相関電子系 / 純良単結晶育成 / 空間反転対称性 / 高圧下物性 |
研究実績の概要 |
本国際共同研究においては,カレル大学(チェコ共和国)およびフランス原子力庁,フランス国立強磁場研究所,ラウエランジュバン研究所(いずれもフランス)において,空間反転対称性をもたない結晶構造,磁性イオンのジグザグ構造,カゴ状構造など特徴的な結晶構造をもつ強相関電子系化合物に焦点を当てて,より広範で効率的なアクチノイドの新奇物質探索,超高圧発生技術の共同開発・運用による圧力下物性研究の加速,現在日本では行えないウラン化合物の中性子散乱実験による磁性・超伝導のメカニズム解明,を目的として研究を進めていく.初年度は主にチェコのカレル大学との共同研究により以下の2点について研究を推進した. 結晶構造に反転対称性を持たない化合物においては結晶内に電場勾配が生じ,反対称スピン-軌道相互作用によりフェルミ面が分裂するなどの興味深い物性が表れることがわかってきた.例えばCeIrSi3はBaNiSn3型正方晶(空間群 I4mm, No. 107)の結晶構造を持つTN = 5 Kの反強磁性体であるが,2 GPa程度の圧力をかけると反強磁性は抑制され,巨大な上部臨界磁場を持つ重い電子超伝導を発現する.BaNiSn3型正方晶をもつ物質は希土類系では数多く見つかっているが,ウラン化合物ではこれまでUIrSi3とUNiGa3の2種類しか報告がなく,どちらも単結晶による研究はない.我々は UIrSi3の単結晶育成に取り組み,帯溶融法により世界で初めて単結晶育成に成功した.育成された単結晶は残留抵抗比が40を超える純良な単結晶であることがわかった.現在,比熱,帯磁率,磁化,磁気抵抗などの基礎物性測定を進めているところである. また幾何学的にフラストレートした結晶構造を持つ反強磁性体Ce2MgSi2の磁性を明らかにするために単結晶育成を行った.単結晶を用いた中性子回折実験により反強磁性の磁気構造を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チェコのカレル大学においては,本研究の主要なテーマである結晶構造に反転対称姓のないウラン化合物UIrSi3の単結晶育成に世界ではじめて成功し,物性測定をスタートさせることができた.チェコグループとの共同研究の成果は,2017年度の国際会議等において現時点ですでに3件(内1件は【招待講演】)の発表が確定している. またフランス原子力庁においては平成29年度の高圧下物性測定に向け,圧力セルの準備について打ち合わせを行った.また実際に使用する実験システムについて確認と試験測定を行い次年度以降の実験の進め方について十分な打ち合わせができた.
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今後の研究の推進方策 |
チェコのカレル大学では純良単結晶育成,物性測定を引き続き進めていく.また育成したウラン化合物の磁気構造を詳細に調べるためにフランスのラウエ・ランジュバン研究所において中性子回折実験を行う予定である.また圧力下の磁化測定用セルの実用化に向けて緊密に情報を交換し連携を図る. フランス原子力庁ではフェルミ面を調べるため育成した純良単結晶のドハース・ファンアルフェン効果測定を行う予定である.またフランス国立強磁場研究所においても磁気相図,フェルミ面に関する情報を得るため強磁場下での磁気抵抗測定,比熱測定などを行う予定にしており,現在日程等について打ち合わせをおこなっているところである.
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