研究課題/領域番号 |
15KK0150
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
角野 浩史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90332593)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 希ガス / ハロゲン / 水 / 沈み込み / マントル / メルト包有物 / 質量分析 / 物質循環 |
研究実績の概要 |
日本に代表される沈み込み帯では、海洋地殻や堆積物など、異なる起源をもつ揮発性成分が異なる量比をもってマントルへと沈み込んでいると考えられる。本研究はこれまで定量的に見積もることの難しかった希ガスとハロゲンの沈み込み量を、最新のマルチコレクター希ガス質量分析計を用いた超精密同位体比測定をもとに決定することを目的とする。 本研究では日本をはじめとした世界各地の島弧から、地殻の混染が少ない玄武岩類を選別し、メルト包有物を含むかんらん石を分離して試料として用いる。本年度は国内におけるこの作業を主に行い、また国内で実施可能な、予察的な希ガス同位体分析を行った。 分離したかんらん石試料のうち、伊豆諸島のかんらん石と、比較のために南米大陸・パタゴニア地域で採取されたマントルかんらん岩捕獲岩について、英国マンチェスター大学のBurgess教授のもとで、原子炉(南アフリカSafari-1研究炉)における中性子照射とマルチコレクター希ガス質量分析計(ARGUS-VI)による高精度同位体分析を組み合わせた、極微量ハロゲン分析を行った。伊豆諸島のかんらん石からは、西南日本やカムチャツカ、フィリピンなど複数の沈み込み帯で報告されている(Sumino et al., EPSL 2010; Kobayashi et al., EPSL 2017)、深海底堆積物中の間隙水に由来するハロゲンは見出されず、ほぼマントル由来のハロゲンのみが含まれていることが分かった。一方パタゴニアのマントル捕獲岩には、試料ごとに起源の異なるハロゲンが含まれており、この地域の大陸下マントルが様々な起源の流体によるハロゲンの汚染を受けていることが明らかとなった。 これらの試料について、キセノンなど重い希ガスの高精度同位体分析を次年度以降に実施するため、オックスフォード大学のBallentine教授のもとに滞在し研究打ち合わせを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渡航先の英国における最初の極微量ハロゲン分析は予定通り実施でき、十分な数のデータが得られた。また次年度に実施するハロゲン分析についても、Burgess教授との入念な議論の末に決定している。次年度の渡航で分析する試料の調製と、それを用いたオックスフォード大学における高精度希ガス同位体分析の準備も、フランス・パリにおける国際会議(Goldschmidt Conference)に参加した際と、今年度の渡航中に同大を訪問した際にBallentine教授と相談し、順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は今年度に得られた成果を踏まえ、必要であればさらに異なる特徴を持った島弧(例えばカムチャツカ、西南日本など)で採取した火山岩から、かんらん石やマントル捕獲岩を取り出して分析用の試料とする。平成30年9月から12月にかけての英国渡航時には、これらの試料についてオックスフォード大学における高精度キセノン同位体比分析と、同マンチェスター大学におけるかんらん石斑晶一粒ずつについてのハロゲン分析を行う。これによりマントルへと一旦沈み込んだものの島弧火成活動により再び表層へと戻っている揮発性成分の起源と量について制約を加えることができ、マントルのより深部へと沈み込む揮発性成分の起源と量を明らかにできると期待される。
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