研究課題
地球システムの中での極域の氷床、とくに南極氷床の変遷と気候変動との役割について理解を深めるための研究を進めるべく、今年度はオーストラリア国立大学に渡航し、客員教授として多くのセミナーやミーティングに参加した。自らも2回にわたって特別講義を行うとともに、様々な講演を行うとともに、今後の共同研究について議論した。オーストラリア国立大学において、学生のプロジェクトのアドバイスを行うとともに、日本で実施することが難しいサンゴのウラン系列核種分析についての実験を行った。また、共同での論文の執筆も行い、原著論文だけではなく、サイエンス誌にもその一つが掲載されるに至った。滞在中には地球科学研究所の所長であるStephen Eggins教授と、共同研究の遂行の方向性と研究者および学生交流についての議論も進め、学生の交流のための共同でのプロポーザル作成も行った。研究と教育をどちらも並行させて発展的に進めていくことを確認できた。また、キャンベラ滞在中にシドニー大学やメルボルン大学、アデレード大学がからセミナーの依頼があり、オーストラリアで感心の高い南極の研究成果について発表するとともに、それぞれのラボで進めている先端研究の技術的な側面について意見交換を行うことができた。スタンフォード大学の研究者とは、12月に1週間国際学会でサンフランシスコに滞在中に会合し、測地学的な研究についての議論を行うことができた。今後、現在共同研究を進めている東南極の沖合堆積物の研究の取りまとめを進めていくことでも合致した。
1: 当初の計画以上に進展している
極域の氷床変動と低緯度の気候変動の連関性について明らかにするため、南大洋の海洋物理学者や古気候研究者および地球化学研究者が多く在籍するオーストラリア国立大学に滞在し、セミナーを通じてフィードバックをもらうことにより、これまで行ってきた南極氷床研究の理解の拡大に至った。特に氷床の変動と風系の変化との関連性については、海洋物理学を研究しているスタッフのコメントから色々と議論を深めることが可能となり、解釈の深化につながった。さらなる共同研究が行える可能性が出てきたことも特筆に値する。また、低緯度の気候保持者であるサンゴ骨格の化学分析も行うことができたとともに、これまで当該分野で大きな問題となってきた、過去のタイミングの決定に使われるウラン系列核種分析についての論文がサイエンス誌に共著で公表できたことは、計画以上の成果としてあげられる。
今後、1年目に出てきた課題について、追加の分析等を日本のラボで行い、問題点の洗い出しと追加でのウランによる分析の必要な試料の検討を行っていく。その分析を行うために研究員を雇用し、効率良くデータを出していく。得られた結果次第では、一部の論文の執筆を開始するとともに、必要に応じて、キャンベラに出かけて行き細かな議論を詰めていく。その後、30年度に再びオーストラリアと米国に赴き、共同研究のまとめとしての論文執筆を進めていく。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 12件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (39件) (うち国際学会 21件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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