研究課題/領域番号 |
15KK0152
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高木 俊輔 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (40380670)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | F正則特異点 / 大域的F正則多様体 / 特異点の変形 |
研究実績の概要 |
今年度は一ヶ月ちょっとの短期滞在であり、研究課題の困難な点を確認する作業に大半を費やした。「標数0の射影代数多様体Xの十分大きい標数pへの還元が大域的F正則ならば、Xは対数的Fano多様体である」というKarl Schwede・Karen Smithの予想に取り組むのが本研究課題の目的であった。大川新之介氏は混標数の変形理論を駆使することでSchwede・Smithの予想の2次元の場合を肯定的に解決したが、大川氏の証明を精査したところ、研究代表者には一部理解できない部分があった。大川氏の議論が正しければ、「標数0の2次元射影代数多様体Xのある1つのpへの還元が大域的F正則ならば、Xは対数的Fano多様体である」という主張(以下、問題Aと記す)が従う。そこで大川氏の議論を理解するために、問題Aの局所版である「標数0の2次元正規特異点(X,x)のある1つのpへの還元が教F正則ならば、(X,x)は川又対数的端末特異点である」という主張(以下、問題Bと記す)が正しいかどうか調べることにした。その結果、問題Bの高次元版(つまり(X, x)が3次元以上の場合)には反例があることをPaolo Cascini・田中公の両氏と確認した。従って問題Bを肯定的に解決するためには、2次元特有の議論が必要である。また正標数の有理特異点の研究のために、Kovacsの準有理特異点に関する最近のプレプリントを通読し、その応用について田中公氏と議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
もともとはSchwede・Smithの予想の3次元の場合を解決するために、大川氏の2次元の証明を高次元化する計画であったが、大川氏の議論を理解するステップで躓いてしまった。權業善範氏と研究代表者によってSchwede・Smithの予想の2次元の場合は正しいことはわかっているが、その証明はザリスキ分解などの2次元特有の議論に強く依存しているため、高次元化は絶望的である。一方、大川氏の議論には高次元化が期待できそうな興味深いアイディアが散見されるため、まずは大川氏の議論の理解に努め、その後で高次元化に取り組むことにした。ここに計画の遅れの理由がある。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」の問題Bに取り組む。問題BのF有理特異点版である「標数0の正規特異点(X,x)のある1つのpへの還元がF有理ならば、(X,x)は有理特異点である」という主張は、ごく最近K. Schwede・L. Maによってパーフェクトイド空間の理論を応用することで証明された。そこでパーフェクトイド空間の理論が問題Bにも適用できないか考える。ただし、F有理特異点版は任意次元で成り立つのに対し、問題Bの高次元化には反例があるため、類似の議論が機能しない可能性も十分ある。その場合は、商特異点の変形に関するテクニックを流用できないか考える。
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