研究課題
本研究では,表層水を保持していた唯一の地球外天体である火星に着目し,表層酸化過程に重要な役割を果たす,海・氷床の消失過程の解明を目指す。具体的には、年代の特定されている隕石から得られた表層水の水素同位体比を入力パラメターとする水散逸モデルを用い,各時代間で消失した表層水および氷の総量を推定する。また,各時代における水の総量(固体水+液体水)と,地形情報から推定されている海水量(液体水)との差分から,固体水と液体水の量比を推定し,惑星表面温度や大気組成といった表層環境を決定付けるパラメターに制約を与える。H29年度は、火星の水の消失時期・消失量と密接に関係する火星大気圧の時代進化をモデル化し、表層に水が存在していたとされる約40億年前の下限大気圧(0.5 bar)を決定した(Kurokawa et al. 2018 Icarus)。また、大気モデルにおいては、水素同位体比に加え窒素同位体比が重要な入力パラメターとなることが示された。そこで、共同研究先(カーネギー研究所)に設置されている二次イオン質量分析計(NanoSIMS 50L)を用い、火星隕石中に含まれる窒素の局所同位体分析法の開発を行った。また、本研究で使用する隕石の入手をより効率的に行うため、Institute of Meteoritics(University of New Mexico) と新たに研究協力関係を構築した
2: おおむね順調に進展している
新たな共同研究者の参画により、本研究で使用する隕石の入手がスムーズに行えたため。
最終年度(H31)に向け、火星表層水量進化モデルの論文化を目指す。論文化に向け実験データの取得および過去研究のレビューは終了している(Usui 2017 Nature; Usui et al. 2018 Volatiles In The Martian Crust)。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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