本研究では,表層水を保持していた唯一の地球外天体である火星に着目し,表層酸化過程に重要な役割を果たす,海・氷床の消失過程の解明を目指す。具体的には、年代の特定されている隕石から得られた表層水の水素同位体比を入力パラメターとする水散逸モデルを用い,各時代間で消失した表層水および氷の総量を推定する。また,各時代における水の総量(固体水+液体水)と,地形情報から推定されている海水量(液体水)との差分から,固体水と液体水の量比を推定し,惑星表面温度や大気組成といった表層環境を決定付けるパラメターに制約を与える。
H31年度は、表層に水が存在していたとされる約40-44億年前の情報を得るため、H30 に引き続き、Institute of Meteoritics(University of New Mexico)より入手した火星隕石の水素同位体分析を行う予定であった。しかし、共同研究先(カーネギー研究所)に設置されている二次イオン質量分析計(NanoSIMS 50L)のトラブルのため、予定を変更し、NanoSIMS分析のための低汚染試料作成技術の開発を行った。本開発により、有機物を含まないメタルテープを用いる資料剥離技術と、FIBによる研磨表面作成技術を確立した。
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