研究課題/領域番号 |
15KK0154
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
谷口 淳子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (70377018)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | ナノメカニクス / ヘルムホルツ共鳴器 / 高感度超流動計 |
研究実績の概要 |
本研究課題が対象とする1次元ナノ細孔中超流動は,1次元性により転移温度が特異な周波数依存を示すことが理論的に予想されている。一方,申請者は基課題では,kHzオーダーの観測周波数帯において,孔径を小さくする(1次元性を強める)ことによる超流動の変化を調べている.本研究課題ではさらに,周波数領域を広げること,および1次元性が顕著に現れる細孔軸方向の超流動流のみを検出可能にする新たな超流動計を開発することを目的の一つとしている. 新超流動計の基本構成は,ナノヘルムホルツ共鳴器の開口部に垂直配向性メソポーラス膜を配したものとなる.今年度初頭(4月)にアルバータ大学Davis研究室に滞在し,昨年度に比べより高周波数帯のナノヘルムホルツ共鳴器を製作した.そして,試作した共鳴器の一部を冷却し,超流動の検出感度を調べた.その結果,従来の捩れ振り子に比べて,一桁上の観測周波数帯において共振が確認でき,十分なQ値(感度)を得ることができた.帰国後,試作した共鳴器を冷凍機に設置するための測定セルを作成し,室温部の測定系の構築を進めている. 平行して,試料として用いる垂直配向性メソポーラス膜の物性測定を行った.その結果,従来用いてきた多孔体試料に比べ,全表面積に対する,細孔内壁の表面積が占める割合は小さいものの,均一な孔径を有していることが確認できた.さらに,垂直配向性メソポーラス膜をナノヘルムホルツ共鳴器に貼り付ける手法の開発を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開発したナノヘルムホルツ共鳴器により,10 kH帯というこれまで不可能だった周波数帯で超流動を検出することが可能になった.これは,1次元超流動の理解を進める上で,非常に重要な進展である.一方,垂直配向性メソポーラス膜をナノヘルムホルツ共鳴器に貼り付ける際に,細孔内に接着剤が入って孔がつぶれてしまう問題が未解決の状況である.接着剤以外にも,蒸着膜の熱圧着など,より広範囲の手法を試す必要があると考えている.ナノヘルムホルツ共鳴器による超流動の検出には成功しているものの,1次元超流動の観測にはいたっていないことから,やや遅れていると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
垂直配向性メソポーラス膜を用いた研究を行うには,ナノヘルムホルツ共鳴器を用いる方向とその他の手法と組み合わせる方向,両方向で進めていく必要がある.ナノヘルムホルツ共鳴器を用いる方向では,有機系の接着剤だけではなく,金属蒸着膜の熱圧着を用いるなど,より広範囲に手法を模索し,1次元超流動の検出を実現する.一方,細孔軸方向の超流動の検出を実現するために,従来の手法と組み合わせることも検討している.具体的には,基課題で進めているねじれ振り子セルに垂直配向性メソポーラス膜を組み合わせることにより,低周波数(kHz)帯における細孔軸方向の超流動の検出を目指す.
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